乱歩地獄
2007/01/30 21:44 - ら行
いきなり始まる、とても地球上のものとは思えない特異な風景は、とてつもないも迫力があり、おおいに目を瞠らされました。
わざわざアイスランドまで行ってロケをした甲斐があったというもの。
しかしその中身たるや、まるで1970年代アングラ自主制作映画で、おおいに驚愕しました。
よもや平成の御世にこんなノリの映像を見ることになろうとは。
うわ、こんなんが30分も続くのかぁ? とかなりウンザリしましたが、それは5分程度で終わって、まずはホッと胸をなでおろす私。
オムニバスなんだから実験的な作風を紛れ込ます、というのは当然ありでしょうけど、全裸でノイズで具体音なし、というのはちょっとなぁ。
今見ると逆に斬新って表現じゃあないでしょう、あの手のアングラは。
そんな感じで、かなり悪い第一印象から始まったこの映画ですが、実験作品はとっとと終わって、その後に続く各作品は、いずれもちゃんとストーリー仕立てになっていたので、安心して観ることができました。
特に最後の作品の驚愕のラストシーンには大爆笑。いやぁいいものを見せてもらいました。
で各話の内容の方ですが、原作からの著しい乖離に度肝抜かれます。
「鏡地獄」では、肝心の球体鏡が物語とまったく関係なく唐突に、ほんの申し訳程度に登場するだけなのは、ちょっとどうかと。
あと、映画の流れをムリヤリ犯罪ものにするためのあり得ないトリックに唖然。
でもまぁジッソーアングルやジッソーライティングが見られたので良しとする。
続く「芋虫」では、登場人物として平井太郎が登場、屋根裏ならぬ床下の散歩者を気取る。
個人的には平井太郎をキャラとして取り込んだのは、なかなか良いなと思いました。
そしてラスト、パノラマ島を見つめる明智小五郎と小林少年の役割らしい少女で唐突に幕には、ちょっと置いてきぼり感に苛まされます。
最後の「蟲」では、その舞台が現代にタイムワープ。殺人者が脳内パノラマ島内で屍体と戯れる。
いずれも江戸川乱歩作品のコラージュ&オマージュ的な内容で、それぞれの元作品は原作と呼べる態を成さないほどに解体されている。
ここまで原作破壊をするならいっそのこと、オムニバスじゃなく、1本もので乱歩オールスターズ入り乱れての一大活劇を見たかったなぁ。
押し絵と旅する男とか赤い部屋とか一寸法師とか孤島の鬼とか怪人二十面相とか。
とにかく自分としては、「芋虫」での、平井太郎が狂言回し的役割を担うってのが好印象だったので。
それより何より、一番良かったのは「蟲」のラストシーンですよ。
凄まじいまでに猟奇的な状況にもかかわらず大爆笑を誘う、このユーモアのセンスが素晴らしすぎる。
そこへ至るまではけっこうタルいし、あとは緒川たまきのエキセントリックな屍体演技くらいしか見るべきところはないんですが、このラストでオールオッケーなくらい爆発力がありました。
実相寺昭雄監督作品「鏡地獄」だけのためにこの映画を観たんですが、これはちょっとした収穫でしたよ。
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- 春陽文庫・江戸川乱歩文庫
この文庫はとにかく、多賀新によるカバー絵がすばらしくて、おおいに魅了されます。
- 銅版画・江戸川乱歩の世界
上記文庫に使われているそのすばらしい絵画を一冊にまとめた書籍。
- アマゾンの各ページはすべて No Image なのが実に残念。春陽堂書店のサイトの探偵小説というページで拝めます。
- テレビ朝日土曜ワイド「江戸川乱歩シリーズ」
天知茂扮する明智小五郎が大活躍! 明智小五郎が変装を解いて正体を現すシーンに激萌!