となりのトトロ
2006/07/29 00:17 - た・だ行
「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」で、神話的世界観や原型的物語、胸躍るスペクタクル等で我々を大いに楽しませてくれた宮崎駿監督が次に世に問うたこの映画は、全2作とは打って変わって、極端にストーリーを排除し叙情的雰囲気のみで構築されています。
のどかな田園風景、美しい自然、共同体構成員の紐帯といった、かつての日本には当然のごとくあったもの、そして今は失われてしまったもの、そんな幸せな景色の中で繰り広げられる、さつきとメイの一夏のささやかな大冒険。
表向きはそんな映画ですが、しかし、そういった美しく心なごむものの向こう側に、監督の箍の外れまくったリビドーがドロドロと溢れ出しているのが透けて見えます。
まるで、広範囲にわたって負ってしまった擦り傷からジクジクと滲み出る薄汚れた半透明の黄色い体液を見せつけられているような気色の悪さを感じる映画。 それがこの「となりのトトロ」です。