花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
2006/09/02 22:06 - は・ば・ぱ・う゛行
死者の蘇生や幽霊との交流、時間超越による過去との再会といった非現実を媒介に、お涙頂戴を強制する作品はハッキリ言って不愉快な私です。
超常現象は何でもアリの免罪符になりかねない。 感動話をしたいなら現実空間内で納めてもらいたいもの。
ところがこの映画を観て一瞬だけそのポリシーを翻す気になりました。
ギャグのタイミングや心温まるエピソードの積み重ね、泣かせへの伏線。 そしてノルタルジーと映画自体のテンポが実に気持ちよい。
笑いあり感動あり涙あり。実に心が温まります。
複雑なオトナの事情を、無垢な子供の目を通して描くことで、徐々に観客に物語設定を分からせる手法もなかなかお見事。
邦画の最高傑作の称号を個人的に与えたいほどすばらしい映画でした。
そう。運動会までは。
運動会のエピソード完了後、この映画は急激に失速…… どころか墜落をしてしまうのでした。
婆ちゃんの幽霊に導かれてタイムスリップで一気に興醒め。以降の展開は噴飯モノの極みです。
繰り返しますが、超常現象というのは何でもアリの免罪符ではありませんよ、脚本家さん?
過去の映像を登場人物と観客に見せることで説明だなんて、なんたる安直。なんたる粗雑。なんたる横暴。
「手抜き」って言うんです、こういうのは。
原作のマンガを読んだことがないんで、いろいろとネットで調べてみましたが、この映画は、どうも力量不足の脚本家のおかげで、とても良質な素材が穢された例なんじゃないかと感じました。
運動会における荘太と死んだ父との対話。荘太による継父の認知。この場面で流したオレの涙を一体どうしてくれるんだ、と言いたい。
前半が神展開だっただけに、後半の投げやりな展開が誠に遺憾です。