日本沈没(2006)
2006/09/03 22:15 - な行
東京崩壊のシーンだけは、いいもの見せてもらったかなぁ、とちょっとだけ思わないでもないけれど、それ以外は取り立てて見るべきものも言うべきこともない、って感じですかねー。
女に「抱いて」と言わせておきながら、怖じ気づいた男が綺麗事ほざいて、二人の間に肉体交渉を持たせないシナリオを平気で書くライターの精神構造が、童貞男の歪んだロマンチシズムに溢れまくってて薄っ気味悪いのは、まぁいいです。
今さらなんで滑稽なくらい重々しく自己犠牲を描くんだろう、という疑問もありますが、まぁ置きます。
問題なのはN2爆弾ですよ。これって現実に存在するんですか?
原作は、膨大な資料と緻密な考証を駆使し、現実に存在する範囲の事象や技術を用いて、日本国土の消失とそれに伴う日本民族のアイデンティティや文化の行く末、国際社会への影響を描いた、一定の制約の中で構築されたシミュレート小説タイプのSFだったように記憶しています。
SFには作家の空想の赴くまま自由闊達に何でもアリな制約のユルいタイプもあると思うんですが、前者と後者は混在させちゃダメだと思うんですよねー。
後者ならもちろん何をやってもいいんですが、前者でもって、存在しない事象や技術を、しかも物語にケリをつけるために導入するのは明らかな反則であり作り手の怠慢なんじゃないでしょうか。
その瞬間、営々と築いてきた物語が、ただのご都合主義な絵空事に堕してしまいますよ。
まぁそれも、全然説得力のない体型と髪型のハイパーレスキュー隊員の前じゃ霞んでしまうんですけどね。