輪廻
2006/12/11 22:19 - ら行
前世で起きた殺人事件の被害者が、現世でその加害者に対して復讐をする、というプロットはとても良い。
前世では加害者だった転生者が、事件が進むにつれて徐々に前世の記憶が甦り、言われのない罪悪感に苛まれるようになる、という展開ならば更に良かったと思う。
因果応報は輪廻転生の必然とはいえ、現世に生きる人間にとっては理不尽かつ不条理。
そういう無力感、無常感までをも感じることができる映画になっていれば、ありふれたホラーではなく、ひとつ突き抜けた哲学的映画になっていたと思う。
まぁそこまでいくと完全に夏目漱石「夢十夜」の第三夜そのままなワケですが。
まぁおそらく監督も脚本家も知らず知らずのうちにパクってしまったんだろうけど、やはりそこはそれ文豪のマスターピース。昨今のシナリオではとんとお目にかかれない重み厚みが感じられます。
そんな感じでプロットはとても良いんだけど、脚本的にはご都合主義があふれかえっていて、かなり残念な気がする。
撮影現場から事件のあったホテルへいとも簡単に空間を超越したり、杉本哲太が事件の全容を把握するためだけに8ミリカメラが出現したり。
これはちょっと手抜きでしょう。
あと、前世の被害者の生まれ変わりを、他ならぬその前世の被害者は拉致に来るというのは、自分が自分を拉致に来るというとんでもない矛盾なような気がするなぁ。
ただミスディレクションは個人的には良かった。
最初、女子大生がよくわからなかったけど、実際にホテルへ行って人形を拾い、ホテル内を歩き出した時に、ああそうだったのか、優香の前世はそっちだったのか、椎名桔平の前世はそっちだったのか、と、腑に落ちた瞬間は、巧い嘘に騙されたような快感を感じました。