マイノリティ・リポート
2007/01/04 21:52 - ま行
政治陰謀物として見ると、それなりに出来たシナリオだとは思う。
ハリウッドだからその辺りに特に大きな穴はなく、ま、監督もスピルバーグだし、安全牌な映画ではありましょう。
でもねぇ。
「マイノリティ・リポート」という題名を、原作からそのまま引き継いでおきながら、肝心の『少数報告』の存在意義が全くない。いや、それどころかただ単に言葉として出てくるだけで『少数報告』自体が存在しない。
代わりに原作には存在しない「エコー」などというものを持ち出して、それを物語の重要な核とする……
原作は、『少数報告』をキーとしたタイムパラドクス物と推理物を見事に融合させた傑作短編なんだがなぁ。
思うにスタッフにも出演者にもディックファンはいなかったんでしょうね。 原作軽視のとんでもない改悪と断言せざるを得ません。
そんなわけでストーリーに関しては、実に忿懣やるかたない愚作ですが、描かれている未来イメージはなかなか興味深いものがあります。
自分に向かって名前を呼びかけてくる広告。これほど恐ろしいものがあるだろうか。
公共空間においてはひっきりなしに網膜走査され、常に他者からアイデンティファイ可能な状況に晒されている個人。これは恐ろしい。
あと、コンピュータの入出力デバイスが実にステキ。
特殊なグローブでそれ自体に触れることで操作される空間に広がる映像のディスプレイ。
クリスタルガラスのようにクリアで美しい外部記憶装置。 記録された映像は、その透明な媒体の中にサムネイルとして煌めく。それ自体ひとつのアート作品のよう。
あんなの欲しいなぁ。
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原作
- マイノリティ・リポート
『マイノリティ・リポート』所収