ゲゲゲの鬼太郎(2007)
2007/05/05 23:36 - か・が行
世界に誇る漫画作品をどれだけ陵辱すれば気がすむんでしょうか邦画界は。
ウェンツが鬼太郎という時点で、もう何も期待してはいけないってことは覚悟していたつもりでした。
でも、映画を観終えての第一声は、TVスポットにもある輪入道のセリフ「何だこれはぁーっ!!」という悲鳴であったのは申すまでもありません。
思うに、この映画の監督、脚本家、プロデューサーの諸氏は、「ゲゲゲの鬼太郎」に対して、思い入れはおろか興味すらないのでしょう。
もしかするとアニメを見たことも、事によると原作漫画を読んだことすらなかったのかも知れない。
まぁ鬼太郎に対する愛うんぬん以前に、この脚本家のその職業適性にはかなり大きな疑問を感じますが。
『天狐』の設定に対して妖狐界のNo.2空狐のクーデターというアレンジを施し、それに『妖怪大裁判』を絡めるプロットは、けっこう見せ場満載になる良いアイディアだと思うんですが、それが何でこんなになっちゃったんですかねぇー。
心の弱い者が持つとその強大で邪悪な力に取り憑かれるという恐るべき妖怪石のせいで起こした悪事が、ついフラフラと置き引き? アホか!
それ以後、父親も息子も妖怪石を持ってるのに平然としてるのはどうしたことですか。
まさか『妖怪大統領』のパン泥棒のエピソードを参考にしましたとか言わんだろうなぁ?
たかだか10匹にも満たない妖狐相手に毛針全弾発射で坊主? バカな!
『妖怪獣』での蛟龍と大鯰の二匹の巨大妖怪レベルの敵にしてもらわないと納得できません。
それとも『妖怪大戦争』の方を参考にしましたとか言わんだろうなぁ?
他にも文句を言い出すと、なんで鬼太郎に両目があるんだよとか、輪入道の性格の設定がなぁとか、天狐様が威厳無さ過ぎとか、クラブで皿回すんなら「皿数え」か「お菊虫」にしとけとか、ろくろ首がお立ち台でジュリ扇かよとか、モノワスレって何だよとか、百々先生いらないだろとか、無尽蔵に出てくるのでいちいち書いてられません。
そしてよほどの低予算なのか全体的にかなりショボいのが泣ける。
CGも着ぐるみもかなりアレだし、黄泉の国に至っては、ごっこ遊びの見なしを観客に強制する状況。
せめて東映がやっていれば、もうちょっと原作イメージを大切にしてくれたんじゃなかろうか。
そう思うと残念でなりません。
せめて角川がやっていれば、「妖怪大戦争」の着ぐるみを流用ができ、もっと別のところに金をかけられたんじゃなかろうか。
そう思うと残念でなりません。
悪い点ばかり思い出していると落ち込む一方なので、ここは気分を変えるために、数少ない気に入った点を列記してみたいと思います。
砂かけ婆はイイ! 雰囲気といいい再現度といいかなり良い。さすがは室井滋。
鬼太郎が無気力で、人類愛ではなく自分の恋愛感情を優先している点は評価したい。
一反木綿の目の形が原作漫画やアニメ準拠のアーモンド型ではなく、妖怪辞典準拠の三日月型だったのはキュンときた。
そういえば「あまめはぎ」の着ぐるみ造形も妖怪辞典準拠で萌え。
墓の下倶楽部のダンスは途中のもラストのも実は密かに好きだ。猫ちゃん田中麗奈のヘンな踊りのおかげか。
そしてオープニングの「ゲゲゲの歌」は割と良かった。
起伏も抑揚もない、無気力で投げやり風な歌唱法がノホホンとした雰囲気を醸し出していて、漫画初期の鬼太郎を想起させる感じ。