デスレース2000年
2007/06/21 21:24 - た・だ行
DVDではタイトルが「デスレース2000」になっていますが、そんなものは認めん!
この映画のタイトルはあくまでも「デスレース2000年」です。
んなわけで東京12チャンネル発トラウマ映画第2弾。
オープニングタイトルが色鉛筆で塗られたフリーハンドのしょぼい絵でのっけから虚を突かれたことはどうでもいいのです。
お色気、暴力、そしてアクション。
まるで絵に描いたような、いかにもB級映画というその展開は、実に潔くってイカしてます。
もしB級映画の撮り方みたいな教程があったら、その教科書に確実に掲載されるであろうと思われるくらいB級映画の王道なこの映画。
さすがはロジャー・コーマン製作総指揮だけのことはありますね。
あったま悪い展開に心がウキウキします。
無辜の民を轢き殺しながらのアメリカ横断カーレースというコンセプトにもクラクラきますが、それを全国中継するテレビ番組の俗悪ぶりを、観てるこっちが卒倒しちゃうほど見事に描ききっていて実に素晴らしい。
老人たちを跳ねずに看護婦たちを跳ねるシーンで「これは彼一流のジョークですね(と記憶していたんですが、DVD見直したら『怪物もアメリカンジョークは心得ているようです』となっていた)」という解説者の一言には卒倒しちゃいそう。
レポーターやキャスターたちの軽薄さや酷薄さ、厚顔無恥ぶりなどは吐気を催すほど真に迫っています。 役者さんたちの熱演が光ります。
風刺の矛先はそういったマスコミの醜悪さだけにとどまりません。
権力というものは如何に人を腐敗させるのか、ということもまざまざと見せつけてくれます。
革命で追い落とされた大統領のことではありませんよ。
新体制アメリカのファーストレディ、アニーの話です。
さんざん人殺しは許せないと言い張っていた女が、いざ権力を握る側になった途端に態度が豹変。
批判者の声は暴力で封殺だ、というその実力行使に、我々観客は快哉を叫ぶ以外に一体何ができるというのか。
いくら偉そうなことを宣っても人間一皮むけばエゴイスト。
そんな人間の醜さを見事に描ききったこの映画は、ただのB級映画と切って捨てるには惜しい作品だと思います。
ところで「デスレース3000」はこの高邁な風刺精神を引き継げるのか。いや、それ以前にそもそもリメイクが本当に実現するのか。気になるところです。