ルネッサンス
2007/08/25 20:14 - ら行
白と黒が生み出すスタイリッシュで洗練された空間。
この斬新で美麗で独自性の極めて高い映像表現は実に素晴らしい。
動画広告、アヴァロン社のロゴ、データベース端末などの美しいデザイン群にも目を瞠らされる。
エッフェル塔や石造の歴史的建造物などの古い町並みと、ハイテクビルや透明路面といった未来的な町並みが融合したパリの風景には特に劇萌えしました。
おフランスのクリエータは本当にオシャレざんすねー。
物語は「陳腐」という表現すら憚られる、どっかで聞いたことある見たことある断片を寄せ集めた、手垢で真っ黒けに汚れた代物です。
遺伝子工学だの不老不死だの秘密裏におこなわれた非人道的な人体実験だの、それら神をも恐れぬ所業が実は一私企業によるものであっただの、その陰謀を食い止めるのが組織を追いやられた一匹狼のアウトローだっただの、「攻殻機動隊」の光学迷彩のパクリだの「AKIRA」の老化した子どものパクリだの。
ヒネリもへったくれもありません。
でもそれが何か?
この映画はストーリーなんてものはむしろ蛇足であり、斬新で美麗で独自性の極めて高い、スタイリッシュで洗練されたその映像表現だけを堪能するものなんだからこれで充分。 初めての映像表現という条件も付いてなおさら。
ただ、こういうコントラストの強いモノクロ映像は、陰謀物や探偵物といったサスペンス、アクション、ハードボイルド、エロティックといったクールでドライな物語に対しては、とても効果的で強い印象を残す効果的な手法だと思うけど、その一方でハートウォーミング、ハートフルといった感動系の物語には不向きなんじゃないかなぁ。 何となくだけどそう感じました。
語るべき物語を選びかねない表現というのはかなり不利なんじゃなかろうか。 それゆえこの映像表現が映画表現のひとつのスタイルとして定着することは、おそらく無いんじゃなかろうか。
そういった意味で、映画史・アニメ史の徒花になりそうな危惧も感じないではありません。
とはいえ、この映像表現はやはり素晴らしいもの。 こういう表現を創り出したクリエータの皆さんを褒めて褒めて褒めちぎりたいと思います。