鉄コン筋クリート
2007/09/17 00:29 - た・だ行
物理法則を無視して飛翔する子どもや殺し屋たちなどというおよそ意味の分からない設定や、主人公の心の暗黒面が具現化した破壊の王などという陳腐なクライマックスなど、ストーリー的な部分は格別優れたものだとは思わない。
それに松本大洋の絵柄はあまり好きじゃないし、それより何より STUDIO 4℃の作風は苦手だ(「きまぐれロボット」には怒りすら覚えました)。まぁ、これは個人的な好みの問題ですが。
しかし、この映画は鑑賞後にとても充実した思いを残してくれました。
昭和の時代をそのまま残す薄暗く寂れた商店街。
乱雑に増改築を繰り返し続けた九龍城のような建築物群。
古ぼけた建物や道が無秩序に蝟集する薄汚い風景。
坂や階段に囲まれた高低の激しい土地。
日本、中国、東南アジアが渾然一体となった無国籍な世界観。
ゴミゴミと猥雑で、ちょっと危険で、でもDNAレベルくらい根源的に心を惹かれる郷愁感溢れた風景が実に魅力的です。
そして、色の奔流とも呼んでよいほど同一画面上で多種多様の色を用いながら、眼にとてつもない負荷がかかるような、胸焼けするようなカラーリングには決してなっていない素晴らしい色づかいのセンスには目を瞠らされ、おおいに感動しました。
さらに、シロの声を演ずる蒼井優の女優魂と、ネズミの声を演ずる舞踏家田中泯の存在感もとても素晴らしく、心を打たれました。
あと、カメラワークはCGだというのは公式サイトに書いてあったけど、建物なんかも3DCGの部分があったりするのかなぁ。もしCGだとしたら、あんな手描き感バリバリの絵に変換するトゥーンシェーダーはスペック高過ぎて感動です。