ほしのこえ
2007/09/17 19:52 - は・ば・ぱ・う゛行
「ほしのこえ」を観たときは、個人でここまでハイレベルのアニメーションを作ることができるのか、とおおいに驚き、かつ賞賛したものです。
ただし、ハイレベルというのは、あくまでのその背景における絵画表現のレベルの高さについてのみの話です。
それらの素晴らしい風景や小物に対してアンバランスにもほどがある、壊滅的なまでに稚拙な人物作画には逆の意味で驚愕しました。
突然、人類対エイリアンという種の存続を賭けた重大な戦争に放り込まれ、自分の意志に関わりなく戦闘機で敵を殺戮する美少女という陳腐きわまりないシチュエーション。
ウラシマ効果により物理的距離だけでなく時間的距離も遠ざかってしまう恋人同士の切ない想いという「トップをねらえ」第6話丸写しなプロット(「トップ~」は恋人同士ではないけれど)。
そして、それらの出来合の要素から構築されたゆえに希薄な物語性、そして、SF考証的に如何なものかという甘い考証も、作品として考えると割と大きな欠点になると思います。
が、それもこれも距離的時間的に隔たった恋人同士のもどかしい想いという映画全体の雰囲気作りのための舞台装置、と割り切ることが自分にはできました。
それに、個人ベースでよくもここまでできたものだ、という思いの方が強く、欠点とはいえ、瑕とまでは認識しませんでした。
ただ私は考えます。
この作品は、青春のもどかしさや一途さといった、作品全体を満たす雰囲気を作ることに成功した作品ではあっても、世界観の構築や物語の豊饒性といったものとは無縁なのではないかと。
それゆえ、ノベライズやコミカライズは、おそらくあまり面白いものではないのではないか、という予感がします。
読んでもいないのにこういうことを言うものアレですが。