雲のむこう、約束の場所
2007/09/17 19:58 - か・が行
新海誠という人(今の私は、あえてこの人を「作家」とは呼びません)の独自性は『独りで長編アニメーション作品を作る人』であるということだと考えます。
であるからこそ「ほしのこえ」は評価に値する作品であったと私は考えるわけですが、続く「雲のむこう、約束の場所」を観たとき、キャラ作画を他人に委ねたという点を、私は英断であると判断しました。
背景と人物の作画レベルがあそこまで乖離しているのは、もうむしろ犯罪ですらあると思っていましたし、粗製濫造なギャルゲーもどきのどっかで見た感がかなり高い没個性的キャラたちは、この映画の持つふやけた叙情にマッチしていて、そういう面からは評価できます。
これなら思い入れたっぷりに陶酔しきった恥ずかしいセリフも無問題というもの。
ただ、この映画を観て強く感じました。
前作となんら変わることののない、観ているこっちが恥ずかしくてコソコソ逃げ隠れしたくなるような甘酸っぱい青春SFテイストという雰囲気だけで、またもや物語として何一つ語っていないというのは、もしかして作家としてかなりヤバいんじゃないのか、と(このときまではまだ「作家」と考えていました)。
別にセカイ系でもいいんですよ。物語として読むに耐えるものならば。 でも物語の態を成していない、というのは、どんなもんかと。
物語性なき雰囲気のみの状態が、いつまでも人を惹きつけておくことができるのか。 私はおおいに疑問です。