パプリカ
2007/09/23 22:54 - は・ば・ぱ・う゛行
今 敏は天才である。
巧みなストーリーテリング、細密な画面構成、魅力的なキャラクター。
設計され尽くしたその映画空間は、観る我々に至福の時を与えてくれるだけでなく、鑑賞を繰り返す度に、違う側面、新しい発見を常にもたらしてくれる。
実に素晴らしい。
ただ、あえて言わせてもらえるならば一言。
実写でいいじゃん!
「我々は映画を撮りたいのであって、そのためのツールとして一番馴染んでいるのがアニメーションという手法である」という意味あいの、今監督の発言を聞いたうえでも、なおそのように感じるときがあります。
特に「千年女優」では、アニメであるよりも実写であった方が更に効果的になったはず、と思われる場面があります。今後「千年女優」について語るときもあるでしょうから、それに関してはそのとき譲ります。
で、今回は「パプリカ」の話。
そんなわけで、今監督作品にたまらない魅力を感じ、おおいに惹かれる反面、上記のように、ちょっとモヤモヤする気分を抱いていた私ですが、この「パプリカ」を観て、胸のつかえが一気に下りました。
巨大な二足歩行生物のような鳥居、せわしなく走り回る達磨、ぐねぐねと筐体をくねらせる冷蔵庫や電子レンジといった箱形家電、乱雑に積み上げられた人形たち。そんな有象無象の付喪神たちが繰り広げる「パレード」の恐ろしいまでの迫力。
夢にダイブしたパプリカが遭遇するめくるめくような数々のイメージの奔放さと無意識を刺激するような存在感。特に、海底から浮き上がってくる理事長の顔をした巨大な鯨には身震いを覚えました。
これら、スクリーン一杯から溢れ出る"絵"のパワーは、とにかく圧倒されたの一言に尽きます。
また、突如グンニャリと軟体化する床面のために困難になる歩行、全部が17階になるエレベータ表示板、場面場面の唐突な切り替えなど、夢論理ならではの感覚を見事に覚醒論理上に構成した画面も本当にすばらしい。
語るべきはそういったビジュアル面だけではなく、ストーリー的にも実によくできている。 実にツボを押さえたそのアレンジが、これまた見事という他ない。
原作をスリムかつコンパクトな形にまとめた点もすばらしいし、島所長を理事長から理事の一人とした設定や、下半身不随の代償として暴走する理事長という設定などは、原作から良い方へ進んだアレンジでしょう。
最近再読するまで、原作の中身はほとんど忘れていました。唯一覚えていたのが、現実空間に突如出現し、建築物を破壊する巨大日本人形のシーケンス。
映画におけるこの場面は、原作を読んだときに私の頭に浮かんだビジュアルイメージそのものだったのが、なんか嬉しかったです。
ただここで言わんでもよいいちゃもんを一つ。
パプリカのソバカスをもっと目につくように描いて欲しかったなぁ。
特に、治療するために所長の体にズブズブと沈み込むカット、ココよココ。 あれだけの顔のアップのシーンなんだから、もっとソバカスがしっかり認識できても良いでしょう?
参考アフィリエイト
原作
コミカライズ
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パプリカ (萩原玲二)
原作小説「パプリカ」のコミカライズ。
ちゃんとソバカスが描かれているのが良いです。
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パプリカ (坂井恵理)
映画作品「パプリカ」のスピンオフ。事件の後日譚を描いたコミック。
書込量が少なく(画面が白い)、また夢の描写や患者の妄想などが何となく浅く感じられて、それゆえ映画が持つ狂気や迫力の欠片も感じられない。が、まあそこそこ良くできた、佳品といった感じ。
筒井康隆原作の映画作品
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(2006 アニメ)
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男たちのかいた絵
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時をかける少女
(1983 原田知世主演)
今 敏 監督作品
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PERFECT BLUE
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千年女優
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千年女優 コレクションBOX (初回生産限定版)
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東京ゴッドファーザーズ
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東京ゴッドファーザーズ デラックスBOX (2枚組)
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パプリカ デラックス・ボックス(2枚組)
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妄想代理人(1)~(6)
今 敏 参加作品
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(美術設定)
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(脚本、美術設定、レイアウト)
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