PROMISE/無極
2006/02/26 18:18 - は・ば・ぱ・う゛行
「天によって定められた運命に縛られず、己の意志で人生を歩め」などという、おおよそ、中国人の死生観・人生観とは相容れないテーゼ。
これが果たして脚本家(にして監督)の陳凱歌による、自らの意志によってたどり着いた哲学なのか、それとも西洋文化にかぶれた結果なのか、あるいは売らんかな精神による妥協なのか。
まぁ西洋受け、ぶっちゃけアカデミー目当ての、西洋的物語を東洋的異国情緒で粉飾した映画と考えるべきなんでしょうね。
それにしても、目も当てられないシナリオと、センスのないCGの使い方は一体なんなんでしょうか。 寓話や神話にもそれに応じた文法というものがあり、何をやっても良いという言い訳にはならないと思います。
時空を越えるタキオン走りだの、鳥籠に囚われた絶世の美女を凧あげだの、サーカスのバイク曲乗り用笊で殺し合いだののバカげた展開に泣きそうになりました。
ラストシーンにも唖然としました。
「河が逆流し、時が遡り、死者が甦らない限り」って、そこまで時間を巻き戻すかね、ふつー? それにだいたい、傾城が満神と契約を結んだ後の時点だったら、時間を戻す意味なんかどこにもないじゃん。
「史記」「春秋左史伝」を初めとする歴史書で述べられた真実の重み。
「三国志演義」「水滸伝」を初めとする歴史に取材した人間ドラマに綴られた心躍る展開。
「西遊記」「封神演技」を初めとするチャイニーズファンタジーで繰り広げられた奔放なイマジネーション。
中国人は4000年の長きにわたり、営みを積み重ね、歴史と文化を築き上げてきました。 そういった偉大な自分たちの財産にもっと誇りを持ってほしいもんですよ、中国人には。
まぁそんなこと日本人に言われたかないでしょうが。
「HERO/英雄」「LOVERS/十面埋伏」の張藝謀と「PROMISE/無極」の陳凱歌は似たような経歴を持った監督というイメージなんですが、映画としての出来にはえらい格差を感じました。