「墓場鬼太郎」第1話『鬼太郎誕生』雑感
2008/01/13 23:47 - 墓場鬼太郎
もうかれこれ半年くらい前になりましょうか。「墓場鬼太郎」がアニメ化されるという話を聞いたのは。
その後、時間が経つにつれて、少しずつキャスティングやキャラ表などが公開されるごとに一喜一憂していました。
1クールだと夜話に該当する話だけがアニメ化されるのかなー、とか。
キャラの感じがなかなかイイ感じじゃん、とか。
鬼太郎、目玉、ねずみ男の声は第1期メンバーかスゲー、とか。
何で寝子とトランク永井と高僧チンポ氏がちゃんとした声優じゃねーんだよ、とか。
OPが電グルってどういうことやねん、とか。
「メロンの気持ち」は聞けないんですか、とほほ、とか。
そりゃーもう、小刻みに公開される情報に、喜びで身悶えしたり、悲しみにうち沈んだりしたものです。
で、いよいよ第一話が2008年1月10日24時45分に放映されました。
それを見て感じたこと、今回はその話。
「幽霊一家」
「幽霊一家 墓場の鬼太郎」
「地獄の片道切符」
所収巻
一言で言うとこの「墓場鬼太郎」というアニメは、絵担当部門と話担当部門の力量がずいぶんアンバランスだなぁ、という印象を受けました。
作画撮影陣の仕事は超絶的。もしこのクオリティが最後まで維持できるのなら、話がたとえ糞に堕そうとDVDは買い、と断言できる。それくらい素晴らしいです。
特に背景は神懸かり。
原作絵の再生度のレベルがスゴイ。100%忠実に再生するのではなく「墓場の鬼太郎」マガジン連載時レベルに洗練されたな絵にアレンジしている点がまた唸らせる。
セル画っぽくないペンタッチもステキだし、赤とか青とかの突拍子もない色づかいが水木絵ぽくって実にイイ。
キャラの絵はちょっとキレイ過ぎるなぁ、もうちょっと貸本絵っぽくしてもいいんじゃないのかなぁ、と水木やその母を見ると思わないでもないけれど、幽霊化した患者や占い婆の再現度を見ると、もう「感動」以外の言葉が出ません。
特に幽霊化した患者は貸本絵をそのまま貼り付けたんじゃないかと思えるくらい素晴らしくて鳥肌が立ちました。
その一方、脚本面、演出面ではちょっと釈然としない点が多々あります。
まず放送コードに触れるらしい血液銀行ネタが消えたことによるアレンジがかなり安直なうえ、整合性がとれていない。
これは実に致命的といっていい欠陥と言って良いんじゃないでしょうか。
輸血がダメだから気のエネルギーというのはいくらなんでも酷すぎる。
幽霊族とは言え、何でもアリってのはイカンと思うのですよ。
たしかに地獄に自由に行き来したりすることはできるけど、他人に対する能力の行使を、そんな目に見えないハンドパワーみたいなもんで済ますのは、手抜きにも程があるというもの。
幽霊族の生命力の強さの主たる部分は、血液や再生能力、あるいは本体から切り離されても死なない手や髪の毛などの体組織といった生物学的物理的なものなんだから、脚本家にはもうちょっと苦悩して知恵を絞ってもらいたいものです。
それに何で末期患者を幽霊化させた者と思われる住所が分かるんだよ。
原作なら供血者リストがあるけど、このアニメじゃそれに該当するものがないじゃん。
そりゃあ診察受けに来ているんだから住所は書くだろうさ。でも、ただ病院に診察を受けに来ただけの者に人間を幽霊化させることができるなんて普通は思わんのじゃないかね。
それ以外にも、鬼太郎の母の舌の先が蛇のように二股に裂けているとか、鬼太郎を突き落とした後、水木母の髪が逆立って白くなるとか、幽霊化した患者が染みを残して消え失せる(これは鬼太郎の母が死んだことを表現しているということは分かるけど、そんなアレンジいらん)とか、水木が二度目に寺に訪れる理由とか、原作にないアレンジが総じてセンスがなくって興醒め。
思うにこの脚本家、鬼太郎に対してあまり思い入れがない人なんでしょうね。
演出的には鬼太郎が片目になるシーン。
放送コードに引っかかるからというのはわかるけど、ああいう表現はどうだろう。あと、ゴロゴロ転がる鬼太郎が何で虹の七色になるんだか。
しかもこのシーンわかりづらい。
- 土饅頭から這い出る鬼太郎
- 腰を抜かす水木
- 水木の胸に這い上る鬼太郎
- 雨の降りしきる墓地
- 片目にだけ雨の跡がついている地蔵
- 逃げる水木
- 投げ出され、転がる鬼太郎
- 隅が赤くなった墓石
- 泣き叫ぶ鬼太郎
5を活かすんなら7はいらない。全部使うんなら不必要な時間軸のねじ曲げ、と思うが如何。
5の比喩はちょっとイイ感じだっただけにこの一連のシーケンスの未整理具合が実に残念です。
というかそもそも、墓石に目をぶつけて片目になるというのがコードに引っかかるんなら、初めから片目のバージョンでいけばいいじゃん。
大方、今回のアニメ化では「おかしな奴」が省かれているから、ここから少しでも取り入れようとでも考えたのかもしれないけど、あんまり意味ないんじゃないのかなぁ。
そんな点からも脚本家の構成力に疑問を感じます。
あと、全11話で、あれだけの話を表現するのは無謀なのでは。
第1話では「幽霊一家」「地獄の片道切符」をアニメ化していたけど、話が早すぎてブツ切りな感じでしたよ。
全部で11話しかないのなら、夜話に該当する部分が尺的にちょうどいいんじゃないかと思うが如何。
まぁ、いろいろ書きましたが、第1話に関しては90%は満足です。
OPとEDはノイタミナなので全く期待していませんでしたから。
今後、寝子とトランプ重井、高僧チンポ氏(京極夏彦は巧いっちゃあ巧いけど、声優の真似事が巧いという意味での巧さであって演技性という意味での巧さは感じられない。まぁ「七色いんこ」的と言いますか)というかなり大きな不安要素があります。
でも絵のレベルがこのランクを維持して、シナリオ的な被害がこの程度で済んでくれるなら、DVD買っちゃうと思います。
次回はいよいよ大塚周夫先生の登場。そう思うと興奮して今から眠れませんよ!