「墓場鬼太郎」第4話『寝子』雑感
2008/02/04 20:43 - 墓場鬼太郎
このアニメは、各エピソードが深く結びついた原作を完膚なきまでに粉砕し、各回ごとに登場人物の一人に主眼を置く話運びに再構成しています。キャラクターの一人称視点的とでも言いますか。
で、今回は「寝子」がメインの物語です。
それにしても相変わらず脚本家の独自路線が原作世界を破壊しまくるシナリオですねぇ。 回を追うごとに原作壊滅度が増していますよ。
「吸血木と猫娘」
所収巻
ボクは幽霊族ただ独りの生き残りなんです、だとか、猫に変身できるちょっと変わった特技だと思えばいいんですよ、だとか、あれは金づる、だとか、トチ狂うにもほどがあるバカげたセリフ群には、開いた口が塞がりません。
まぁこんな巫山戯たセリフも、鬼太郎は幽霊族であり人間とは違う倫理を持っているということを表現しているつもりなのかも知れないけど、そんなアレンジ要らないよ。
寝子も寝子で、世界で唯一の存在だなんてカッコイイわ、だとか、私たちお友だちじゃないの、だとか、鬼太郎さんのせいよアナタが歌手になることを薦めなければこんなことには、だとか言わされてるしなぁ……
なんで、原作どおりの素っ気ない展開じゃダメなんですかね。
てゆーか、こんなくっだらないシーケンス入れるくらいなら、初の猫化シーンをジックリ描けよ。 原作では3ページもかけてる場面を、あんな短い尺で済ませるなんてあり得ねぇ。 美しい顔が徐々に徐々に醜く変貌するあの余韻が良いのにさー。
まったく「誰がシナリオ書いとるのか!」
そしてニセ鬼太郎。なんであんなに不気味キャラなんですかね。
寝子に自殺を吹き込むニセ鬼太郎はなんだかとっても自信満々。たぶん霊毛チャンチャンコの力を確信しているという設定なんでしょう。
でも原作では地獄行きには及び腰(人として当然ですが)だし、それに、ねずみ男との間に繰り広げられるメチャクチャ面白いやりとりから感じられる、ニセ鬼太郎の俗物性というか小市民性というか、小者感が実にイイ感じなんですがねぇ。
特に川にダイブする直前の寝子との会話のシュールさは筆舌に尽くし難い面白さなんですがねぇ。
ニセ鬼太郎をこんなおどろおどろしいキャラにしちゃって、次回、地獄での目玉親父に対する態度とか、「水神様が町へやってきた」での態度はどうするつもりなんでしょうかねぇ。
なんでこうまでユーモア性を排除し、怪奇性のみに偏ろうとしたがるんでしょうねぇ。
ところで猫化した寝子の声には実際の猫の声がかぶせてあったけど、これはひとえに中川翔子の力量不足を露呈した結果なんでしょうか。
普通の会話とかはそんなに悪くないと思っていたんですが、特殊状況を演じ切るほどの演技力は持ち合わせていなかった、ってことですかね。
後ろ向きなことばかり書いていてもウンザリしてくるだけなので、多少なりとも良い点は、と探してみると……
各回ごとにフィーチャーリングするキャラを変えるというシリーズ構成として当然の帰結ですが、今回は、鬼太郎のチャンチャンコが縞柄から格子柄にすりかわっている、ニセ鬼太郎がバケツを持って寝子の元に現れた、という事実だけが視聴者に提示されています。
そして次回、ニセ鬼太郎メインの話でそれら理由が視聴者に知らされ、地獄の砂エピソードが展開されるんでしょう(次回予告で「地獄の砂」云々と出ていたし)。
この倒叙は、伏線とその回収という観点からいうと、原作の伏線とその回収が見込めない分、個人的には評価したい構成です。
曲はアレだけどジャケは最高。
特に裏面に激萌え!
あと、「トランプ重井の前座」~「超人気少女歌手キャット寝子ステージ上で猫化」までの一連の時間経過の背景に「君にメロロン」ワンコーラスを通しで流す演出も、定石とはいえ良いと思いました。
曲調が昭和30年代の歌に聞こえないというのが、かなりの減点材料ですが。
昭和ムード歌謡の雰囲気をかなり再現した良曲の「有楽町で溶けましょう」がAメロすら満足に終わらないうちに途切れたことを考えると、フルコーラス流れた「君にメロロン」の破格の扱いはちょっと納得しかねますな。