「墓場鬼太郎」第5話『ニセ鬼太郎』雑感
2008/02/10 10:41 - 墓場鬼太郎
原作付きの作品にいかに独自要素を付け加えるかが脚本家の力量、という心得違いは実に嘆かわしいことだと思いませんか。
放送コードに抵触するから変えざるを得なくて独自展開、というのはまぁ仕方ないとあきらめもつきましょう。
そうそう、放送コードと言えば「醜い」という言葉すら使えないというのは、実に戦慄すべき状況ですね。TVで語られる物語がどんどん貧弱になるわけです。
それはともかく、原作よりも遙かに面白いエピソードを考えつくことができる能力を持った脚本家なら独自展開をいくら繰り広げても良いだろうけど、そうじゃないならまずは素直に原作を再現する努力をしてほしいもの。
前回の「寝子」はそんな風潮のおかげで壊滅的に嘆かわしいシナリオと化していましたが、今回は打って変わって実に良いシナリオでしたね。
唖然とするしかない「天誅ーっ!!」なんてバカげたエピソードはありました。
鬼太郎と寝子の愁嘆場なんていう、鬼太郎夜話とはおよそ縁遠い湿っぽいエピソードもありました。
地獄で安寧を得たから寝子は現世に帰らないという原作に対し、現世に未練を残しつつも恐怖を抱いているから寝子は地獄に留まるというアニメ、っていうのは原作の肝を読み切れていないのか、それとも原作レイプなのか……
だいたい鬼太郎は寝子にご執心だけど、寝子は鬼太郎に惚れてはいないんじゃ……
女性クリエーターの場合、論理よりも感情を優先しすぎて営々と築き上げられてきた創作物を一瞬で台無しにする。そんな傾向が強かったりするからなぁ(偏見)。
そして時間軸と場面があっちこっちにシャトルするにも程がある、という点もあります。
「吸血木と猫娘」
「地獄の散歩道」
所収巻
そんな感じで、一部、何だかなぁな部分もありますが、今回は、あれだけ多くの原作エピソードをなかなか良い具合にコンパクトにまとめ、しかもバンク対応しまくりで作画方面にも優しい。なかなかの力作と言って良いでしょう。
「車に轢かれてぺっちゃんこ」とか「頭がふやける性質」とか「バケツ頭にバットで殴打」とか「ねずみ男の頭の一部の返却」とか、今までのパターンからすると割愛されるんじゃないかと危惧していたんですが、しっかり描かれていてよかったよかった。
先週とは打って変わってヘタレなニセ鬼太郎でこれまたよかったよかった。
しかし、以前懸念を表明しましたが、貯金通帳巻き上げどころか、ナンダカ族の不良指南と深大寺すきやきパーティそのものが削除されてしまったとは、実に残念です。まぁ話数を考えると致し方ないことではありますが。
今回はシナリオも良かったけれど、演出的にもなかなかイケてましたね。
「我が助手、鬼太郎少年の頑張りを」云々と力説する場面で、ねずみ男のひげを敢えて描かない、原作再現演出。
そして、白寝子とニセ鬼太郎との対面シーン。寝子の真っ白な目玉にニセ鬼太郎が写り、それを見てニセ鬼太郎が恐怖して逃走する。いやーなかなか恐いですねぇ。
良いです、実に良いです。
そして予告編を見る限り、次回の水神様編も大いに期待が持てそう。
ちゃんと森協さんも出てくれば借金取り立てもある。第3話『吸血木』で一度やった「油断のならぬ小倅」撥でポカポカも再びやってくれる。
第6、7話で『水神様が町へやってきた』と『顔の中の敵』をどのように解体再構成するのか。 「水神サイド」と「人狼サイド」になるんだろうけど、うまく分けられるのかなぁ。どう料理されるのか楽しみです。