「墓場鬼太郎」第7話『人狼と幽霊列車』雑感
2008/02/24 20:45 - 墓場鬼太郎
今回も前回に引き続き、優れた脚本で実に喜ばしい。
鬼太郎が人狼と知り合うきっかけになる、部屋を取り違えるシーケンスは、なかなか巧い原作ショートカットでしたね。 そのまま水神退治に出かけるというのも、これまた巧いショートカットかつ原作再構成です。
「顔の中の敵」所収巻
ただアバンタイトルがねー。
前回の続きなんだから、アバンタイトルはやはりAパート冒頭のシーケンスじゃなくちゃあ。
人狼視点による疾走感あふれる映像というのは、作品自体にメリハリをつけるうえでとても良い演出だとは思いますが、これをアバンに持ってくるのは構成ミスなんじゃないでしょうか。
最後、鬼太郎親子の召使いにされてしまったねずみ男の口調もちょっとね。悔しさを滲ませながらも丁寧語で押し通すのが、機を見るに敏なねずみ男の本領でしょう。
でもその二点以外は、脚本、作画、そして演技、どれをとっても現代アニメの最高峰とでも呼ぶべき出来で実にすばらしい。
特にBパート冒頭の鬼太郎に毒饅頭を食わせる大塚周夫先生の演技のすばらしさったらないね。
「おまえと結婚したいという女性がここに来たんだよぅ」という二期ねずみ男イントネーション。
「鬼太郎さん、この饅頭はその女性がぜひお前にって持ってきたのよぉ」というオカマ言葉。
「まーんじゅう食べながら話そうね」という子どもをなだめるような口調。
周夫先生の神っぷりはヤバ過ぎ。 芝居に一切の妥協を許さない周夫先生の役者魂は心に響き渡ります。
あと人狼の宝亀克寿、ガマ令嬢の川浪葉子。このお二人の声も役にフィットしていて良い人選。
川浪さんは何回か前の「ゲゲゲ」でモンローの声もやっていたけど、ベティさんがモデルのガマ令嬢もやはりこの人の艶っぽい声でないとね。
作画的にグッときたのは「騙されたーっ!!」の鬼太郎の顔。
これは原作のその場面の絵ではない。ねずみ男にバケツ越しに頭を強打されホンの少しおかしくなった鬼太郎が、ビート族に出会う直前「我ながら惚れ惚れするような声だ」と歌を楽しむ鬼太郎の顔。
ビート族絡みはごっそり削除されて大失望をしていたから、この作画は嬉しい限り。
欲を言えば、ガマ令嬢にメロメロなねずみ男の描画をもっと増やしてほしかったなぁということ。
利に敏くてドライかつ自分本位なねずみ男が、恋いに狼狽し、自分の利・不利も判断不能に陥るほど度を失うあの異常事態は、髭ピーン心臓ドッキンやラブレター持ってバタバタする程度じゃ弱すぎる。
鼻の頭の火傷は、鬼太郎の喫煙が放送コードに引っかかるそうなので無理だとしても、最低限「カミチャマ!」は出してほしかったもの。
今回で鬼太郎夜話篇は終了。次回からは独立短編系の墓場鬼太郎になるわけです。
次回の『怪奇一番勝負』で一番気になるのは、やはり暗黒世界の案内人。
エンディングでは一枚絵で描かれているこのグロテスクな姿がアニメではどういう動きをするのか、実に楽しみです。
あとリモコン手がちゃんと描かれるのか否かも大事なところ。 一期ゲゲゲの「吸血鬼ラ・セーヌ」では手じゃなくて下駄に改変されてたからなぁ。