リアル鬼ごっこ
2008/03/02 22:56 - ら行
その稚拙なタイトルから分かるように、中身も実に稚拙です。
ご都合主義で安っぽい設定。
小学生レベルの語彙で綴られる貧相な科白。
陳腐をはるかに超越した唖然とする結末。
とりわけ「王さま」という言葉が実に幼稚で、聞いてるこっちが恥ずかしくって身悶えしそうになります。 でも、ちょこっと立ち読みした程度なんですが、原作小説は輪をかけて稚拙な代物みたいですね。 やはり10代が書いた作品のレベルというところでしょうか。 まぁ「フィフス・エレメント」や「シャークボーイ&マグマガール」で慣れてますけどね。
それにしても、何がダメってやはり世界観設定がダメでしょう。
佐藤という苗字の人が次々と謎の死を遂げる、というツカミは、オレ的にはけっこうグッときた。 最初の犠牲者が落雷に打たれての死(自然死)だったし、三番目の、ごく当たり前に友達と話しながら線路に入る女子高生とか、期待でワクワクしましたよ。これは一体何が起きているのか、と。
でもその理由が分かった途端、期待に膨らんだ胸が1ミリ秒で萎みました。
でも片方の世界で人が死ぬと、もうひとつの世界の同じ人物も同時間に死ぬ、という設定はどうなのか(実際のとこ、ラストシーンで事実上の設定破綻の発生がうかがえるワケですが)。
パラレルワールド・ジャンパーも場当たり的。
映画世界観としての整合性はとれていますよ。でも多元宇宙理論にそんなご都合主義なオレ考証加えないでよ。
書き手の非力さが露呈していますな。 科白の語彙の貧弱さも加わって、観ている方としては、やっぱしょせんは10代かでもキミは頑張った良くやったようんうん、という生暖かい気持ちに包まれてきます。
そんな上から目線な気分を思う存分味わわせてくれる微笑ましい映画ですが、でもワタクシ実はそんなに嫌いじゃありません。
アクションがところどころ光ります。
最初に主人公が追い詰められる狭い公園から脱出するアクションは目を瞠らされました。 走るシーンも疾走感が伝わってきて実に良いです。
そして何より、鬼ごっこの舞台となる住宅地(特に最初の)の「何の変哲もなさ」が最高に良い。 ご近所で異常きわまりない死が発生しているかのような不条理さ。 こんなシュールな思いを抱かせてくれる映画はそうそうお目にかかれない。
稚拙な原作でも、あれだけ見れるものにした、監督と役者陣の健闘をむしろ賞賛すべき映画なのかもしれません。 まぁラストのアレはないだろ、という気はしますが。
鬼ごっこの不条理さとアクションのカッコ良さだけに意識を集中でき他は一切目に入れない俺フィルターに自信のある人は観てもよいかもしれません。