「VOCA 展 2008」と「ART ADVANCE ADACHI 2008」
2008/03/30 20:24 - アート巡り

昨日(2008年3月29日)は VOCA 展 2008 を見に、上野の森美術館に行ってきました。
先週(2008年3月23日)のNHK教育TV「新日曜美術館」のアートシーンで紹介されていたんですが、そのとき写っていた、とある作品が気になったからです。
それはとても悪い印象を抱かせる作品でした。 これはちょっと現物がどんなもんだか確認したいものである、という気にさせるくらいです。
んなわけで現物を見に上野くんだりまで行ってきたんですが、私の第一印象が間違っていなかったことを確認するだけでした。虚しい。
その作品は『z=0.00』というタイトルの、5分という長きにわたるシーケンシャルな映像です。 Flash 使いなら誰もがアッと卒倒するであろう何のヒネリもないその作りには愕然必至。
実際にどのような技術を使用して作られたのかは知ったこっちゃないですが、Flash では以下の過程で再現が可能です。
- 静止画像を用意
- 動く perlinNoise を生成
- その perlinNoise を置換マップとする DisplacementMapFilter を静止画像に適用
原理的にはたったこれだけ。
ちょっと Flash で再現してみましょうかね。
といってもわざわざこのためにコードしたものではありません。 ずいぶん前に DisplacementMapFilter の実験として書いたコードで、DisplacementMapFilter についてもうちょっと学んでから提示しようと思っていたものです。
1. 静止画像を用意

2. 動く perlinNoise を生成
動く perlinNoise の作り方は、以前エントリーした perlinNoise (3) という記事を参照してください。
3. DisplacementMapFilter を静止画像に適用
領域クリックで、作動と停止をトグルします。
と、ここまでが素材。
このように作られたグニャグニャ動く静止画をある程度の長さの動画にします。
そのように作られた動画を何種類か用意し、オーバーラップでシーケンシャルにつないで一本の動画にします。
そのシーケンシャルな動画に、さらに DisplacementMapFilter を適用します。置換マップは波紋状。 ただし波紋状に歪ませるのは各素材がオーバーラップしている最中のシーンに対してのみ。
それが『z=0.00』の構造です。あまりといえばあまりな作り。
ここまでヒネリのない、テクノロジーの単純使用による表示に過ぎない代物が『作品』扱いされているなんて……
せめてインタラクティブならまだしも、単なるシーケンシャルな動画ですよ?
この作者による作品はもう一点展示されていて、そちらはモーフィング動画を繋いだだけの、これまたあんまりな代物。
モーフィング技術が発表された当時ならそんなんでも作品として、もしかしたら成立したかもしれない。 けど、今どきこんなんが「アート」と呼称され、あまつさえ美術館に展示されているなんて……
選考メンバーは誰一人として、メディアアートと呼ばれる作品群を、ただの一つも見たことがなかったのだろうか、という疑問が頭の中を渦巻きましたよ。
作者解題がないんでよくは分からないんだけど(あっても読む気はせんが)、大方これはコンセプチュアルなんでしょう。
コンセプチュアルアート嫌悪派の私としては、「アート」なんてホント言った者勝ちだなぁ、ということを改めて見せつけられた思いです。 おかげでますますコンテンポラリーアートに対する不信感が募りました。

そんな荒んだ心を抱えたまま、次は ART ADVANCE ADACHI 2008 を見に北千住へ。
「デジスタ」で紹介されたことのある作品が幾つか展示されているということだったので、それらを見に。
でも展示作品そっちのけで、「アダチン」と「イベントのあまりにも微笑ましい手作り感」のおかげで、生あったかい気分に包まれた私の心はおおいに癒されたのでした。