バンテージ・ポイント
2008/04/02 23:43 - は・ば・ぱ・う゛行
8人の目撃者、8つの異なる視点。だが彼らの語る内容は食い違う。この映画は黒澤明の『羅生門』の手法を取り入れて云々……
なんていう話を、この映画を観るに先だって聞いていました。
『羅生門』ってことは、事実をいくら積み重ねても真実は見えてこないどころかますます混迷を極めるシュールレアリスティックな物語なのかなぁ、と思っていたら、さにあらず。
単純な真実がただ一つ存在するだけ。 事件を目撃していた複数の人間がそれぞれ主役となり、その一人称視点で描かれる同一時間を、主役を変えてループしまくる構成の映画。言ってみればザッピングしない複数視点の映画。
その構成は別に斬新というわけではないです。複数視点の一人称時間巻き戻し手法はオドレイ・トトゥ主演のオレ的激萌え映画『愛してる、愛してない...』をすぐに思い出すし、他にも幾つかあったような気がする。
そして物語面では「藪の中」的なものを期待していた私としては思いっきり肩すかしを食らいました。
でも決してつまらん映画ではないですよ。
ってゆーかむしろ映画の始まりから終わりまで、始終ハラハラしっぱなしのサスペンス感ドップリさには、かなり大きな快感を味わいました。
まぁサスペンス慣れしていないということなのかも知れませんが。
それにしても「時計じかけのハリウッド映画」にもしっかり明記されていますが、ハリウッド映画ってーやつぁ、その登場人物は、事件に巻き込まれた後は何がどうあっても心理的に成長しないといけないんですねぇ。
一人は自分に対する自信を友情を取り戻し、もう一人は失われつつあった家族との絆を取り戻す。
そんな展開でないと観客は安心できないんですかねぇ。