親切なクムジャさん
2006/01/28 21:04 - さ・ざ行
被害者家族による弾劾裁判、私刑実行へ至るまでの参加者たちの葛藤、恨み骨髄の加害者を殺してはみたものの、死んだ子供が帰ってくるわけでもないし、恨みも悲しみも消えるわけでもない、という無力感・空虚感に打ちひしがれる人々、といった一連のシーケンスはとても良い。
シーケンス最後のケーキ屋でのなし崩し的な解散はとても印象に残る。
でもそれ以外は、話の展開とかキャラの設定とか、なんか雑な感じ。まぁ監督としては、私刑のシーケンスだけ撮れれば、あとはどうだってよかったんだろうね。
たとえば、イ・クムジャは上流家庭のお嬢様…… とまではいかなくても、せめてごく普通の家庭で親の愛情を受けて育った幸せな女の子だったにもかかわらず、これほどの忍耐力・計画性・残酷さをもってペクを殺すに至る転落人生を歩んだ、という映画だったとする。
それならば観客として、その復讐心の大きさに震えたり、そういった強い想いを抱くことができる人間の心の底知れぬ暗部に恐怖したり、クムジャを弄んだ運命の不条理に思いを致して悲しんだりすることはできる。
でもクムジャはかなり問題のある家庭環境で育ったすっごいアバズレ。生い立ちからして既に犯罪予備軍じゃん。そんな女の転落劇・復讐劇を提示されてもなぁ。
高い崖からの転落はドラマになるだろうが、低地で小石に躓いた程度じゃ、観客の心を大きく打つことはないのではなかろうか。