ユメ十夜
2008/09/28 19:42 - や行
ひどい……
これは酷い……
いくら何でも非道すぎる……
漱石先生も草葉の陰で卒倒死してしまうのではないかと、観ていてハラハラしちゃえる出来。
10話のオムニバスともなれば玉石混淆は致し方ないとは思うけど、石ばかりで玉がない。 たとえ石でも大理石や御影石ランクの石ならまだともかく、そこいらへんにうち捨てられたクズ石、キズ石ばかり。
実相寺昭雄や市川崑のようなベテランですらあの程度。若輩ばらに至っては何をか況や。
以下個別に感じたこと。
第一夜 △
原作のロマンチシズムが全然表現されていない。
小泉今日子のしゃべり方に萎え萎え。彼女には荷が重いでしょう、こういう役は。 もっと切なく儚い演技ができる女優をヨロシクって感じ。
第二夜 △
基本は原作に忠実。でもラストで芥川龍之介が「杜子春」でおこなったのと同じ方向性の原作改編。
原作改編は別にいいんです。 せっぱ詰まった絶望感で打ち切った原作から、一歩進めて魂の救済の話にしたのは悪くはないと思う。 個人的には原作どおりにして欲しかったという想いはあるけれど。
だけど、「それでいいのだ」というスクリプトはどうかと思う。 観客のほとんどはバカボンのパパを思い浮かべて、鑑賞後感が台なしになるんじゃないのかなぁ。 この場合「それでよいのだ」もしくは「それでよい。それでよい」がふさわしいのでは。
第三夜 ○
前半に独自エピソードを加えているが、後半はほぼ原作どおり。
あんまり怖くないけどなー、という以外特に述べることなし。
原作は話ごとにロマンチシズムや恐怖やナンセンスなど、実にバラエティに富んだものになっていますが、第三夜~五話までは心霊系に走ります。
第四夜 ◎
原作要素をほぼ完全無視し独自作品と化したジェントル・ゴースト・ストーリー。 夢十夜の中のひとつというポジションでさえなければ、大絶賛します私は。
「ねじ式」を彷彿とさせる画面作りはご愛敬でしょう。
シナリオ自体は王道(またの名を陳腐)だけどよく練られた良品。
第五夜 ×
ムダに不気味さを醸し出そうとしている愚作。 独自路線がJホラーの典型的な負の部分を表出してしまった作品。
心霊風味・ホラー風味はもう飽き飽きという感情も伴って、不愉快度は高いです。
第六夜 評価不能
心情的には非常にアンビバレントな想いを抱かされる作品。
原作にかなり忠実、しかしラストでの原作にない独自要素追加がとても優れているという意味では原作を超えた、映画にした意味のある作品。その点は高く評価したい。
でもなぁ…… 2ちゃん用語はいくら何でも痛いよ。痛過ぎる。
だいたい「ユメ十夜」が劇場公開されていた当時でも「鬱だ氏のう」とか「小一時間問い詰めたい」はもう廃れていたフレーズだと思うけどなぁ。
「毒男」とか「萌え」とかは使いどころ違ってないか?
そんなワケで差し引きゼロで評価不能。
第七夜 ○
天野喜孝ファンにならオススメできる作品。 原作にも忠実という点からも悪くはないと思う。 でも「こたつ」シリーズキャラの投入は如何なものか。
第八夜 ××
夏目漱石の夢十夜って読んだことないけど、夢がテーマなんだから、ワケのわからん映像をテキトーにつないどけばいいんだろ(鼻クソほじほじ)、ってな監督の姿や声が、その映像から透けて見える実に酷い出来映え。
原作要素も実質的に皆無と言ってよい程度の扱い。
原作に対する尊敬も、観客に対する礼儀もわきまえていない、やっつけのレベルにも達していない全十話中最悪の作品。
唯一ほめられるのは「鴎外せんせ~い」
第九夜 ×
可もなく不可もなく、という以外特に感想を抱けない作り。
でも面白いか面白くないかといえば、つまらない作品ではある。
第十夜 ×
全十話中、最も生理的不快感を催させる作品。やはり漫☆画太郎のセンスは受けつけられない。
原作の第十夜はナンセンスと不条理がテーマだと思うんだけど、それはある程度描かれていたとは思う。豚プロレスとか宇宙飛行士とか。
でも醜女(デブ)を嫌悪した報いという因果応報を持ち出したのは大きな失策。
以上、各話について簡単に述べてきました。
原作が、原作なら、ということをたびたび書きましたが、私は別に原作至上主義というわけでもありません。 原作重視派ではあるとは思いますが。
原作テイストが活かされていたり、原作を超えて素晴らしくなっていれば良いんです原作を大きく弄っても。 それが欠片もないから憤慨しているわけです。
劇場へ行こう行こうと思っていながら結局行けずじまいだったこの映画ですが、劇場へ行かないで本当に良かったと、今、胸をなで下ろしている私です。