『北斎DNAのゆくえ ~北斎一門肉筆画傑作選~』
2008/10/16 20:22 - アート巡り
私は朝がダメな人なので、休日一日で動ける範囲はかなり狭いのが悩み。
神奈川県在住ではありますが、東京北部や西部、あるいは千葉、埼玉といった場所は、中途半端に近いのでわざわざ泊まりがけで行くのはアレだし、中途半端に遠いので休日普段どおりの目覚めだと現地に着くのが遅くなる、となかなか痛し痒しで行くのが億劫なエリアなんでした。
ところで「東京てら子 5」に参加させていただいた日は、充分帰宅が可能な時間とは言え、中途半端に遅い時間になったのです。
チャーンス(声:みやむー)。
ちょうど折も折、気になっていたけど場所が場所だけに行こうかどうしようか迷っていた展覧会があったので、遅くなったのをこれ幸いと山手線沿線のカプセルホテルに宿泊、翌平成20年10月12日(日)にその展覧会場へ行きました。

板橋区立美術館の『北斎DNAのゆくえ ~北斎一門肉筆画傑作選~』を滑り込み鑑賞。
何で気になっていたかというと、新日曜美術館のアートシーンでこの展覧会が紹介されていたんですが、その中の一枚に度肝を抜かれたのです。
その作品は「吉原格子先の図」。
描き手は葛飾
葛飾北斎の娘ですね。 「おーい」「おーい」といつも北斎から呼ばれていたので応為という雅号にしたというのは有名な話。

つい先日亡くなった緒形拳が葛飾北斎を演じた『北斎漫画』という映画で、田中裕子が演じていたのがこの葛飾応為だったはず。
冒頭がいきなり田中裕子の乳放り出しシーンで始まったので、純朴な少年だったワタクシは驚愕した記憶があります。NHKの朝ドラ(「マー姉ちゃん」)に出てた女優が乳放り出しとる!
ビックリと言えばこの映画、蛸と裸女の絵を描くシーンはモデルを見ながら描くという映像にしていたように記憶しています。 遙か昔にちらっと見ただけなのであんま覚えていませんが。
話を元に戻します。
「吉原格子先の図」とはどんな絵かというと。上記の当展覧会のページにも写真がありますが、以下のページにある写真が大きめで見やすいです。
まずはその絵を見てほしい。そうすればなぜ度肝を抜かれたかお分かりいただけると思います。
浮世絵で影を表現している絵なんて初めて見ましたよ私。
というか西洋画が入ってくるまで、日本では光と影を表現した絵なんて皆無なんじゃないですかね。 絵画に疎い私が断言しちゃうのもどうかと思いますが。

で、その影がとても不吉な感じがして、光の部分との対比を併せると何やらユング的なものが感じられてきます。
光に照らされた遊郭の店先を、男たちが徘徊する闇が取り囲む、しかも闇の世界が画面の手前という構図。 ほのかに照らされた男たちはいずれも後ろ姿で表情がうかがえない不気味さ。
見ていると心が不安になってくる負の迫力に満ちた絵です。 男ではたぶん描けない絵だと思う。実に素晴らしい。
それ以外の絵ですが、やはり画狂人の絵はスゴイ。 出展作品では「花魁図」と「弘法大師修法図」に心惹かれました。
門人たちの絵はなんか師匠の劣化コピーみたいで、個人的に心躍る絵はありませんでした。 でも応為の「吉原格子先の図」が目的だったので充分満足です。
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