『「白」原研哉展』
2008/10/19 21:29 - アート巡り
平成20年10月18日(土)は以下の三展覧会を鑑賞してきました。
- 「白」原研哉展(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
- 丸山直文展―後ろの正面(目黒区美術館)
- ジョン・エヴァレット・ミレイ展(Bunkamura ザ・ミュージアム)

まずはギンザ・グラフィック・ギャラリー『「白」原研哉展』の話から。
私、デザイン業界のことはほとんど知らないんですが、書店の美術・デザインコーナーに一際異彩を放つ、統一されたフォーマットの書籍群があることには気づいていました。
以下がその書籍群です。
美術やデザインの書籍といえば、やはり色の氾濫というイメージを思い浮かべましょう。 しかしこれらは、ご覧のとおり若干例外がありますがいずれの本も白と黒。 広々とした余白と控えめなロゴが実に印象的ですね。
そして、それらはいずれも同じ人の著作、もしくはその方が関わっている本でした。 原研哉というデザイナーの人です。
モノクロ好きとしては書籍の装丁にはとても目を惹かれたんですが、この方の活動について積極的に見てみようというところまでは興味を惹かれていない状態でした。
このたび、ggg にて上記書籍リストの最初に挙げた「白」という本の出版にあわせて展覧会がおこなわれるということなので行ってきました。
展示内容は 1F は商業デザインの展示。香水と日本酒のパッケージが並んでいます。 あと、今展覧会のコンセプトである書籍「白」の任意のページなんでしょうか。短い文章と白に関する写真のパネルがありました。

B1F では三つの立体作品が展示されています。
- 『WATER LOGO』
- 『鹿威し』
- 『蹲 -方寸』
いずれも超撥水加工布による水滴を使ったインスタレーションです。
会場全体と『WATER LOGO』は黒、『鹿威し』と『蹲 -方寸』は白。 モノクロームで構成された展示空間が実に美しい。
『WATER LOGO』は「TOKYO FIBER '07 SENSEWARE」で展示されたもので、以前、当方でもちこっと取り上げました。
現物を見て改めて想いを新たにしたことがあります。
これは、表示する文字を簡単に入れ替えられるようにして、駅やショッピングモールといったコンコースにコマーシャル媒体として設置した方がより魅力的なんじゃないかなぁ。
『鹿威し』は21_21 DESIGN SIGHTの第2回企画展「water」で展示されたものとのこと。 今展覧会の会場写真のページの中央に全体像があります。
写真手前が鹿威しの部分。 「water」展関連イベントページの<連続トーク>「水に溺(おぼ)れる、水曜日」vol.3 の説明文のところに、この作品の水を流し出す筒の部分の写真がありました。
下り傾斜は鹿威しから流れ出た水が伝い落ちる板で、ここに超撥水加工布が貼られています。 写真を見て分かるとおり、この板にはパチンコの針よろしくたくさんの突起が配置され、それが水の軌跡を複雑にしています。
この作品を見て感じたのは「音」って要素は実に大切なものだなぁ、ということ。
伝統的な鹿威しは竹が出す澄んだ音とそのエコーが実に素晴らしく、心が落ち着き、澄み切ってくるもの。
一方、この『鹿威し』はガラス製で、水を流し出すのと反対の方は撥のように丸められ、鉄琴の板を叩くようになっています。 その鉄琴の板が出す音が濁ったチンというとても短い音。
ズッコケ感とガッカリ感がかなりデカい。
『蹲 -方寸』は金沢21世紀美術館「Alternative Paradise~もうひとつの楽園」で展示され、また、OZONE「夏の大茶会」2006というイベントでも展示されたそうです。
これは未来の茶室を表現する T-room project というクリエータのコラボレーション作品群のひとつとのこと。
このページの真ん中へんに写真がありますが、細い樋を伝ってきた水が、とても浅い勾配を持ったすり鉢に向かって流れてきます。 すり鉢の外縁部に注ぎ込まれた水滴は、慣性によってすり鉢をグルグル回転しながら、やがては中央に穿たれた正方形の穴に落ち込むというもの。 こっちのページにはその穴の部分の写真があります。
樋の内側とすり鉢。水が触れる部分すべてに超撥水加工布が使用されていました。
「蹲」は「つくばい」と読むそうな。「つくばい」って何じゃいって調べてみたらば、茶室に据えられた手水鉢とのこと。
伝統的な蹲は実用性と哲学性を兼ね備えたアイテムだそうですが、この『蹲 -方寸』はあくまでも鑑賞だけが目的。
すり鉢をグルグル巡る水滴に惑星の運行を思い浮かべ、そこから宇宙を感じる物だそうな。
手を洗うなどという下賤な実用性なぞ無ぇと来たもんだ。 さっすがコンセプチャルアート様は違うネ(笑)。