『丸山直文展―後ろの正面』
2008/10/20 20:31 - アート巡り

平成20年10月18日展覧会巡りの続き。
新橋から山手線に乗って目黒駅で下車。そこから目黒区美術館へ向かいます。
『丸山直文展―後ろの正面』は新日曜美術館のアートシーンで紹介されていて気になった展覧会(またかよ)です。
上記紹介ページにある作品写真はちょっと分かりづらいですが、滲みが特徴の絵画。 上から二番目と三番目の作品に興味を惹かれました。
アクリル絵の具を下地処理を施していないキャンバスに塗ることで滲みを出しているとのこと。 すいぶんと茨道な手法に思えます。 小さなキャンバスならともかく、大きなキャンバスではかなり不利なんじゃないでしょうか。
抽象画と具象画(基本風景画)が展示されていましたが、私個人的にこの手法で具象画はちょっとどうかと思えました。
滲みを使った風景画といえばやはり水墨画が一番に思い浮かびます。
水墨画は滲みとそうでない部分のメリハリにより、とても豊かな表現力を持つ絵画。
また滲みを使った表現としては水彩画があります。
水彩画の滲みの魅力は、たくさんの色が複雑に絡み合うことで発生する色の豊かさや厚みといったものなんじゃないでしょうか。
水彩画といえば片山若子さんの絵が好きです。 おかげで角川文庫の星新一作品をまたもや買い揃えることになりました。

話を戻して。
展示されている作品は全ての線が滲んでいます。 そしてその滲みは基本的に単色が水に滲んでいるか、あるいは二つの色が滲んでいるかのどちらか。 水墨画のようなメリハリもなければ、水彩画のような豊かさや厚みもありません。 密度の低い単なるぼやけた絵です。ビジュアル的にボンヤリしているだけでなく、絵が持っているであろう力もボンヤリしているように感じられます。
ここで言う「力」というのは鋭角的な力強さという意味ではなく、絵から感じられる情動や感情といった、鑑賞者の心に波紋を広げるトリガーという意味です。
具象画の意味があるんだろうか、とちょっと疑問を感じました。
逆に抽象画はとてつもなく素晴らしい。
手法それ自体は抽象画も具象画も変わっていないのになぜか抽象画の方は、色の密度は濃く、また単色滲みでも力を感じます。 また展覧会場の壁を占拠するような大きなサイズでありながら滲みを持った絵画というのは、とてもインパクトが強い。
抽象画作品には心を奪われました。
展示順序は具象画(風景画)、抽象画、具象画(人物画)と並んでいたんですが、作家歴としては抽象画から具象画へという流れで、風景画は最新作であるとのこと。
個人的にはそこんところにモヤモヤしながら、再び山手線に乗り込んだのでした。
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参考アフィリエイト
片山若子イラスト
星新一作品(角川文庫)
米澤穂信作品(創元推理文庫) |
鯨統一郎作品(祥伝社) |
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