『文豪怪談傑作選/金井田英津子原画展+神保町のお化け絵本展』
2008/11/03 23:47 - アート巡り

平成20年11月3日、連休最後の本日は神保町に行って参りました。
っても行き先は古書店街から若干離れておりまして、駿河台は日本大学そばの東京古書会館という建物。
昨日(11月2日)、たまたま「幻妖ブックブログ」で標記展覧会が明日まで開催、というニュースを得まして、滑り込み駆け込みで最終日に行ってきたわけです。
標記のとおり、ふたつの展覧会が同時開催されていました。 まぁ展覧会というか販促イベントだな、うん。
まず『文豪怪談傑作選/金井田英津子原画展』
ちくま文庫に「文豪怪談傑作選」というシリーズがあります。 怪奇幻想小説の唯一無二のアンソロジスト、東雅夫選によるものですが、そのシリーズのカバー絵の原画展。
いやあ、なかなか繊細なペン画で実に味わいがあって良かったです。 白と黒が織りなす幻想空間といったところでしょうか。
←は「文豪怪談傑作選」のうちの一冊ですが、ご覧のように空の部分はクリーム色に、壁の部分には水色にと、指定色で色を付けています。
怪奇幻想系が好きなので、このシリーズは書店で何度も目にしていて、良い雰囲気だなぁと思っていました。 しかしこのたび原画を見て、考えを改めざるを得ない。 白と黒だけで構築された原画が持つイメージが台なし。とても残念な装丁です本当にありがとうございました。
と、難癖をつけましたが、良い装丁もあるんですよ。→みたいな。
こちらは白と黒の無彩色、有彩色は青系統のみを使った、落ち着いた良い装丁です。
なお、この金井田英津子さんという方は他にも夏目漱石の「夢十夜」や内田百けんの「冥土」といった作品にも挿絵を付けているそうな。 そのラインナップを聞いただけでワクワクしてきますね。
次は『神保町のお化け絵本展』
今回ここを訪れた目的は、上記、幻妖ブックブログのエントリーでも紹介されている「妖怪カタログ」購入と妖怪和本の観覧です。
ワタクシ不勉強で存じ上げなかったんですが、大屋書房という和本専門の古書店として有名な書店があるそうな。 この展覧会は、そちらの売り物のうち、妖怪に関わる和本をいくつか展示しているものです。
今、存じ上げないと言いましたが「妖怪カタログ」にある大屋書房の場所を見て分かりましたよ。 映画「姑獲鳥の夏」の京極堂のモデルになった古書店だ。
で、出品されていたモノには、かつて各種妖怪本で見た「水虎説」や「龍宮魚勝戦」「長崎聞見録」「暁斎百鬼画談」「化物婚礼絵巻」といった諸々がありました。
それら現物を拝むことができて、それはそれで感慨深いものがあるんですが、各種百鬼夜行絵巻が思いの外稚拙な絵で驚きましたよ。
よく、本で見る伝土佐光信筆真珠庵本はかなり細かい書き込みがあったように記憶しているんですが、今回展示されていたものは、それに比べるとまるで殴り書きに見える(それとも細かい絵は江戸期の百鬼夜行絵巻だったかなぁ)。
純粋に絵として見られたのは河鍋暁斎のだけでしたよ。
一番興醒めだったのは歌舞伎役者の絵。猫騒動の扮装を描いたもの。 これ妖怪の絵じゃないじゃん。
まあワタクシ妖怪好きと言っても、京極夏彦がその著「妖怪の理 妖怪の檻」で分類している「通俗的妖怪」は妖怪に非ず「民俗学的妖怪」だけが妖怪である派だからなぁ。
ちょっとズレてるといえばズレてるかもね。
ってもどこまでが「民俗学的妖怪」でどこからが「通俗的妖怪」かという線引きは非常に難しいんだけどね。
まぁそれはともかく、今までは妖怪についての本に掲載された写真でしか見たことがなかった和本や巻物の現物を見ることができて、いろんな意味で勉強になりました。
また自分の指向性が、キャラクター化された妖怪ではなく、(視覚化を否定するものではないけれど)民間伝承寄りである、ということも改めて意識化できました。
と言いながらも、観覧後は古書店街まで戻って日本特価書籍小売部で「妖怪画本・狂歌百物語」買っちゃったんだけどね、てへ。
参考アフィリエイト
文豪怪談傑作選
- 室生犀星集―童子 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 泉鏡花集―黒壁 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 吉屋信子集―生霊 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 柳田國男集―幽冥談 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 三島由紀夫集―雛の宿 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 川端康成集―片腕 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)
- 百物語怪談会 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選 特別編)
- 文藝怪談実話 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選 特別篇)