イーグル・アイ
2008/11/28 22:49 - あ行
劇場の予告編やテレビのスポットを見て、実はかなり期待していた作品でした。
ケータイや街頭の電光掲示板・監視カメラ・モニタービジョン等々、ネットワークに繋がったありとあらゆるアイテムに干渉して主人公に指令を送る謎の女ハッカー。 彼女は一体何者なのか。彼女の目的は何なのか。
実際に映画を観ていて、そのスリルとサスペンスにはかなりシビレました。
この映画イイかもしんない!
いやが上にも高まるそんな期待も、しかし、彼女の正体が明かされたその刹那、一気に萎んでしまいました。
「アイ,ロボット」かよ!!
ケータイのハッキングはともかく、町中に張り巡らされたネットワークをハッキングしたストーカー行為はかなり現実味を帯びていたので、もっと現実的に充分起こりうる展開になるのかと思っていたら、SFファンタジー映画に一気に飛躍するとはガッカリだ。
製作関係者には星新一の「声の網」を読んで猛省してもらいたいもんです。
ちなみに「声の網」の発表は1970年(「星新一公式サイト-作品一覧-参照)。 今から40年近く前の作品だということを監督も脚本家もプロデューサも肝に銘じるように。
巻き添えの交通事故が続発するカーチェイスもハラハラドキドキ感は実に良かったですよ。
偶然を積み重ね過ぎながらも結局は目的を達する輸送車襲撃から飛行機搭乗も、多少ムリを感じたけれどもそれほど悪いシナリオとも思えなかった。
でもですねぇ。そう思えたのは、それもこれも彼女の正体が人間だと思えばこその話。 彼女の正体が分かった途端、なんじゃそりゃー! と一気に醒めました。
映画としてはああいうサスペンス感じがあった方が面白いということは分かります。 でもこの映画はマンガチックに全くの絵空事として描写されているものではありません。 あり得るかも知れない出来事として描かれています。
だったら、ああいう街中がひっくり返るような騒動を起こして、警察の出動を促すような作戦はダメでしょう。もっと隠密裡に事を運ぶのがスジってもんでしょうが。
最後に設定された起爆トリガーもまどろっこし過ぎる。 ピタゴラスイッチじゃないんだから…… もっと効率的に最短ルートで爆破するよう計算するのがリアリティってもの。
それにしてもちょっと感心したのは彼女の行動原理。
9.11直後は、アメリカこそが正義、アメリカこそが被害者、アメリカこそが世界の警察的なヒステリックな思念がハリウッドにも充満していたような記憶があるんですが、この映画は体制批判とも言える内容で、アメリカにも多少の良心があるのかなぁ、という印象を持ちました。
あ、私はテロリズムは大嫌いですよ、念のため。