Flash Math & Physics Design:ActionScript 3.0による数学・物理学表現[入門編]
2009/01/09 22:08 - Flash参考書
いやー、ついに日本語ネイティブでも数学・物理公式スクリプトに特化したサンプル本が出る時代になったんですねー。
今さらな話ですが Flash はモーションアニメ作成ソフトから始まり、バージョンアップが進むうちにスクリプト面を強化してきたという経緯があるので、巷間にあふれるサンプル集もムービー系とスクリプト系が混在しており、どちらかといえばムービー系の方が割合が多い状態です。
スクリプト偏重派の私としては長年忸怩たる想いがあったことは否めませぬ。
洋書では "Flash Math Creativity : Second Edition" や "Foundation ActionScript 3 Animation: Making Things Move!"(翻訳本:「ActionScript 3.0 アニメーション」)のように、理数系スクリプトを使ったグッとくるビジュアルやモーションに特化したサンプル集的解説書がありますが、和書ではそのような書籍は皆無だったわけで、これは待ちに待った本と言えましょう。
イージング、三角関数、三次元表現、一次変換、フィボナッチ数列、黄金比、等加速度運動、均等配置等々々…… 数学や物理の公式によって定義されたそれぞれのモーションは心躍りますね。
それらは上に挙げた洋書で習得可能な事柄ですが、日本人にとっては日本人が日本語で書いた本が最もしっくりくるワケです。 英語だとやはり読むにはそれ相応の労力や時間を必要としますしね。
個人的に興味を惹かれたのは Case16 の均等配置と、後節にしばしば登場する「物理法則」。
後者についてですが、今まで見てきたコードは以下のようなものでした。(1)
ですが、この本では以下のような式が提示されています。(2)この式は物理で学習する際に用いられる等加速度運動の公式とのこと。
まぁ従来のサンプルは処理速度との兼ね合いで、(2)で得られるのと同じような動きを、できるだけ単純な式で表現しようとして(1)のような記述をしたのでしょう。 それはそれでとても合理的なことですが、実際の物理公式をスクリプト本で見ると新鮮ですね。目を惹かれましたよ。
ただこの本は、デザイナー方面の人にスクリプトによるモーションを伝授する、というスタンスと見受けられます。
各サンプルはスクリプトファイルによるフルスクラッチではなく、表示物はライブラリシンボルにリンケージ設定して、new でステージにアタッチする手法を採っています。
このあたりが個人的には不満というか不服というか。
円形のシンボルくらいライブラリシンボルではなく、graphics.drawCircle() で生成する労はとってもよかりそうなものです、いくらスクリプターではなくデザイナーに向けた本とは言え。
あと、ループ処理の扱いですが Event.ENTE_FRAME を一切使わず、TimerEvent.TIMER のみを使うという、なかなかに個性的なコーディングテクニックを披露しています。
スクリプトに不慣れな人が対象なら、どちらかと言えば ENTE_FRAME 使った方がすんなり入りやすいような気がしないでもないんですけど(根拠はない)。ここはちょっと違和感を感じました。
さらに全体的にサンプルが垢抜けないという弱点もありますが、とはいえ、ネイティブな理数系スクリプト本の登場は慶賀の至り。 しかもタイトルには「入門編」とあるからには「応用編」も出版予定なのかもしれぬ、そう思うとちょっとワクワクしてきますね。