『まぼろしの薩摩切子』
2009/04/21 21:47 - アート巡り
「コンテンポラリーアート CB COLLECTION 六本木」を出て左側を登坂。 左手にロシア大使館、右手に麻布郵便局と外務省飯倉公館を見て、そのまま道なりに歩き続けると六本木アートトライアングルが一角、六本木ミッドタウンに辿り着きます。
ここでの目的地は、2009年3月28日(土)~5月17日(日)まで『一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子』という展覧会がおこなわれているサントリー美術館。

関東人のワタクシは、江戸切子にはそれなりの馴染みがあるのですが、薩摩切子というのは初めて知りました。
第47回NHK大河ドラマ『篤姫』で高橋英樹が演じていた島津斉彬。 その斉彬が薩摩藩藩主の時代の一瞬だけ栄えたガラス工芸。それが薩摩切子なんだとか。
見事なカッティングですねぇ。 驚いたのはエッジを和らげた削り。 切子といえば鋭角的な縁という印象が強いんですが、でもその縁にヤスリを掛けたがの如き丸みを帯びたものが散見されました。 切子でこんなの初めて見ましたよ。
そして、藍や紫、黄といった色の美しさ、特に紅色のぼかしは殊の外美しい。
大皿の力強さ、高坏の足の重厚さ、組杯の繊細さ、どれもこれも素晴らしいもの。
でも私、亀戸にある工房「華硝」の作品を見たことあるんです……
ここで展示されている薩摩切子と「華硝」の江戸切子では150年の時間的間隔があるんだから、ガラスの製造技術やカッティングに使う機材道具の進化の度合いが全然違う、そんな二つのものを比べること自体アンフェアだってことは理性では承知していんですが…… でも私の感性は承知しないんです。
「華硝」の作品は、切子としてみたときに、ガラスの色やカットの文様がかなり冒険しているなぁとは思うけど、でも「華硝」の作品を見ると他の江戸切子が霞んでしまうんですよねぇ。
そして長の歴史を閲したこれらの薩摩切子を素直に見ることができなくなるとは…… 美のイデアを知ってしまうのも、ある意味、善し悪しだなぁ……
いやホントまじスゴイんだって「華硝」。
お値段の方もそれなりに張りますけど、そのカット模様やガラスの色合いには魅了されます。 光を受けてキラキラ輝くところなんか見ちゃったらもう頭ボンヤリしちゃうくらい美しいもんです。
でも「華硝」の作品も、これら薩摩切子やその時代の江戸切子あってこその美しさ。 この展覧会に出品されている作品には敬意を払わねばなりませぬ。
次はいよいよ最後。 六本木アートトライアングルの別の一角、新国立美術館へ。