レッドクリフ PartII 未来への最終決戦
2009/04/27 22:26 - ら行
かつてブラッド・ピットがアキレウス役で主演を果たした『トロイ』という映画がありました。
その映画は、監督が想像の翼をはためかせ過ぎて、あまりといえばあんまりな捏造話に堕していたものです。
もっとも、イリアスのトロイア戦争のくだりは発想元であって、それ自体を映画化したものではない、という弁解をしていましたが(文章で)。
そういう非道い古代西洋の戦争映画に「絶望した!」ワタクシですが、今回は古代東洋の戦争映画で、もっと「絶望した!」のでした。
『トロイ』で感じた絶望感なんか甘っちょろいもんでしたよ。
三国志ってのは中国人の魂じゃあないんですかね。
中国人監督による、人民解放軍全面バックアップ作品がこんなトンデモになってるなんて(涙)。 観終わってからしばらくは腰が抜けて立てないくらいショックでした。
誰のせいだ? エイベックスのせいか? それとも呉宇森が大林宣彦や新海誠みたいな限度知らずの超ロマンチストなの?
苦肉の策もなければ連環の計もない。七星壇もない。
一方、孫姫や小喬の単独先行などという創作エピソードが差し挟まれる。 後ほど述べますが小喬のエピソードは物語としては、かなりイケてると思います。 でも国主の妹が単身敵の陣地へ潜入するってのはどうよ?
あと、義の人劉備の言動が何かおかしいなぁ、と思ってたら…… そんなのあり?
ラスト、丞相 vs 大都督。あんな状態にしておいて、どういうオチをつけるのかと思ったら…… いくら何でもそりゃないだろう。
まぁ演義において関羽は見逃してますよ。 でもねぇ、あれは義理があったからであって、恩も義理もない周瑜があっさり解放するわけないだろーが。
窮地に追いつめた敵をあっさり見逃す総司令官を「清廉」の一言で済ます、ってのはいくら何でもどうかと思うよ?
もうこのラストシーンだけでこの映画は説得力ゼロ。
そんな捏造著しいストーリー展開なわけですが、物語として考えたとき、夫を想い国を思い、敵地に単身乗り込む妻の壮絶な決心などはドラマチックでロマンチックなエレメントではあります。 一杯の茶であの大いくさを負けに追い込むなんて、かなり物語的には盛り上がりますよね。 あの小喬と曹操の茶談義は物語的に実によくできていると思います。個人的には大好きですよ。
でもねぇ…… わざわざ三国志を汚さないで、架空戦記でやればいいじゃないですか、そういうのは。
そんなこんなでダメダメ映画ではありますが、満足した点が三つほどあります。
まずは疫神を追い払う四つ目の面。ありゃ方相氏ですかね。けっこう歴史的な考証もちゃんとおこなわれているようなので(エンドロールでそのような記述があった)、三国時代に、あのような風習があったんでしょう。
次は10万本の矢。やっぱこれと大炎上がなければ赤壁とは言えません。
そして、前作は亀門遁甲に燃えたけど、今作では盾で鎧った亀に燃えました。