『日本のシュルレアリスム』
2009/06/21 21:48 - アート巡り
私の展覧会初体験はルネ・マグリットでした。 渋谷の百貨店で開催されていたものだったと記憶しています。
実は私、シュールリアリズムが好きでして、その後もポール・デルヴォーの展覧会見に行ったり、ゾンネンシュターンの画集(現在絶版)を買ったりしたもんです。
今は原語の仏語発音チックにシュルレアリスムと呼ぶようですが、私が興味を持ち始めた頃は英語風なシュールリアリズムという呼称でした。
ところで先般、以前、『北斎DNAのゆくえ』展を見た板橋区立美術館で『開館30周年記念 館蔵品展 幻惑の板橋~近現代編~ 日本のシュルレアリスム』なる展覧会が催されていると聞き及びました。
シュール好きのワタクシとしては行かずばなるまいと、西高島平まで行ってきたわけです。 やっぱり三田線の終点は遠いですなー。

でも私、この美術館大好きです。 散歩のついでにぶらりと立ち寄れる気兼ねなさが、地域に根ざした施設って雰囲気で実に好ましいです。 そして何より明確な目的を持って作品を収蔵している方針がすばらしいんじゃないでしょうか。
ウチの地元の美術館も、収蔵作品や催す展覧会に明確なコンセプトを持って運営するというその態度を、大いに見習ってくれないもんかなぁ。中身が(収蔵品、展覧会ともに)器に負け過ぎだっちゅーの。
ま、地元批判は置いといて。今展覧会の展示作品はぶっちゃけた話、残念なものが多かったです。
影響を受けてるなんてレベルじゃない。 モチーフから色遣いから何から露骨にダリのパクリが多くて驚きさ。
ゴツゴツとした岩が散在する荒野や青空、刺又状の杖で支えられた物体…… 蟻の蝟集を見つけたときは、そこまで真似せんでも、と心の中で呟きました。 あげく、どう見ても『内乱の予感』です本当にありがとうございました、な絵まで目にする始末。
まぁそんだけダリのインパクトが強かったってことなんでしょうねぇ。
今回一番印象深かったのは中村宏という画家の「血井(1)」という作品。 約2メートル×1メートルのその油彩画は使われている色は赤と白の二つだけ。赤と言っても朱や茜などではなく、多少くすんだ、まさに血の赤の色が実に強烈。
白いキャンバスに血を叩きつけながら描いたような、とても力強い作品でした。
なお、このページに8番目に画像があります。
ところでシュルレアリスムというと、何かよく分からない一般人とは縁が遠いものという印象を受けるかも知れませんが、実はけっこう身近だったりします。
小学校の図工の時間で必ず習う技法には、シュルレアリスム由来のものがあります。 コラージュ、フロッタージュ、そしてデカルコマニー。
コラージュは特に説明不要ですね。切り貼りです。
フロッタージュは滑らかでない表面の物体に紙を起き、鉛筆でそのテクスチャーをこすり写す技法。要は拓本。
デカルコマニーは絵の具の転写。絵の具をはじく材質に絵の具を塗って、そこに紙を押しつけるのが元々の手法らしいですが、図工の時間では、紙に絵の具を垂らして二つ折りにして広げ、ロールシャッハテスト風なものを作るなんてことをやったはず。
あと、グラッタージュという技法もあります。油彩での技法なので図工の時間には出てこないと思いますが、私はこの技法のコンセプトと同じようなものを幼稚園で習ったことがあります。
かように身近なシュルレアリスムの技法ですが、コラージュとフロッタージュは一人の作家によって発明されました。
マックス・エルンストという作家です。
コラージュ作品では『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢
』『慈善週間または七大元素
』が河出文庫で比較的入手しやすいと思います。
フロッタージュでは、水木しげるファンなら『がんばれ悪魔くん』の「なんじゃもんじゃ」編に出てくる"もののけ"といえば分かるでしょう。
この"もののけ"の元ネタはエルンストの『逃亡者』という作品ですが、これはフロッタージュでこすり出した模様をコラージュしたものだとか。
我々は小学生の時にシュルレアリスムの洗礼を受けていた。 そう思うと、シュルレアリスムに対する好意がますます募ってきますね。