『バーチャルな骨』
2009/07/05 21:38 - アート巡り
前回、うつわ U-Tsu-Wa 展で痛い目をみた 21_21 DESIGN SIGHT ですが、現在開催中の「骨」展は告知がなされた当初から、見たいと思っていた展覧会でした。
いつ行ったもんかと考えていた矢先、かようなエントリーを発見。 これは行くしかないでしょう、ってゆーか行け! ってことで、展覧会およびクリエイターズトーク3「バーチャルな骨」を見るため、7月4日は六本木の日と決めさせていただきました。
中村勇吾さんの「CLASH」の話ももちろん聞きたかったんですが、今回のワタシ的なメインは緒方壽人さんの話。 当展覧会場のナビゲーションシステムについての話が聞ければ、ということで参加しました。
山口情報芸術センターでおこなわれた「ミニマム インターフェース」展で使われた on the fly の「骨」展版ですね。
まずは登壇者お三方による「出展作品について開発者が語る」から始まります(コーナー名は私のでっち上げ)。 その後、フリートークと質問コーナーと流れていきました。
中村勇吾さんの「CRASH」
当初の企画は、ケータイや MacBook などを高所から落とし、それらが地面に衝突して破壊する様をハイスピードカメラで撮影したものにするつもりだったとのこと。 しかしそれだと7~800万円の経費がかかるが、ギャラは X 万円だから大赤字になるんで、リアルではなくプログラムに変えたとおっしゃっていた。
ギャラがいくらかなんてそんなぶっちゃけ話が聞けるとは思ってもみなかったので、ちょっと驚きました。 差し障りがありそうな気がするので幾らだったのかということは伏せますよ。
質問コーナーに対する回答で出た話ですが、CRASH は ActionScript で組まれているとのこと。
緒方壽人さんの「ナビゲーションシステム」
このナビゲーションシステムは紙がマーカーとして認識されているわけですが、その認識方法について。
天井に赤外線照射装置が設置されており、テーブルに向けて赤外線を照射、照射装置の場所には赤外線感知カメラも設置されており、反射してきた赤外線を捉えているんだそうです。
説明のデモ画面では、赤外線が戻ってきた場所は白くなり、そうでない場所は黒くなっていましたが、白い場所はテーブル盤面で、黒い場所はナビゲーションの紙や人というわけ。
で、その黒い領域のうち矩形を判別し、それをナビの紙として認識しているそうです。
ナビの紙には上下左右が判別できるような方法でマーキングが施されています。 今回は「骨」という1文字の漢字と「bones」という5文字のアルファベットが穿たれており、それによって上下左右と裏表が判別できる仕組みです。
で、ここでポイントになるのは反射してきた赤外線の捉え方。
光源と反射面が真正面に向き合っている場合、反射した光は光源に向かって帰ってきます。 しかしそうでない場合、当然のことながら反射した光は光源には向かいませんよね。入射角と同じだけ反対側に反射します。 ビリヤードを思い出していただければ、実感していただけましょう。
で、広いテーブル盤面に対して赤外線照射装置はひとつなわけですが、そのままだと装置の真下以外の赤外線は認識できなくなってしまいます。
そこで出てくるステキ素材。その名も再帰性反射素材。
この再帰性反射素材を使うと、どんな入射角でも、光源に向けて光が反射するんだそうです。 ググったら図入りの解説がここにありました。
技術の進化による表現の進歩の実例を見せていただきましたです。
五十嵐健夫准教授の「物体の堅さを表現した2次元形状の操作手法」
今回のトークショーで一番の衝撃。 やっぱ学者はすげーなー、ということを思い知らされました。
「骨」展出品作品「another shadow」は五十嵐准教授と緒方さんのコラボレーションです。
実装は上記の緒方さんによるもので、ロジックは五十嵐准教授による「物体の堅さを表現した2次元形状の操作手法」によるものです。
どんだけスゴいのかは五十嵐准教授のページにあるデモを見てください。
ドローで描いた絵をこんな風に動かすことができるなんて吃驚仰天ですよ。 落書きが、あたかも現実に存在する物体であるかのように動かせるなんて!
どういう原理でこのような動きが実現可能なのかというと、動かすモードにしたときに、絵を小さな三角形に分解してるんだそうです。
そして、絵を動かした際、各三角形の歪みが極力少なくなるような計算をおこなっているとのこと。
私の拙い説明よりも、上記ページの Movie というリンクにある QuickTime ムービー(英語)を見た方が早いので、そちらをご覧ください。
なお、本展覧会のカタログにも書いてあります(こっちは日本語)。
その他にも、「手書きスケッチによる3次元モデリングシステム Teddy」や「インタラクティブなぬいぐるみデザインシステム」というスゲぇソフトウェアのデモをいろいろと拝見し、改めて学究の徒の偉大さを認識した次第。 詳しくは五十嵐准教授の project のページをご覧あれ。
帰り道、興奮冷めやらぬまま、勢いで中村勇吾さん関連アイテムをふたつ購入。
DVD「プロフェッショナル 仕事の流儀」と雑誌「AXIS 2009年08月号」。
DVD は以前TV放映されたアレです。映像特典として番組未放映シーケンスが入っていますよ。 二度の驚き関連で「風とデスクトップ」の話と、あと茂木さんへの逆質問ってことで中村さんから二つの質問がなされています。
雑誌の方は表紙と巻頭インタビューに登場。 トークイベント中にも話があったんですが、tha で今後発売される予定の額縁コンピュータの話がほんのちょこっと出てます。