『野村仁 変化する相―時・場・身体』
2009/07/21 20:50 - アート巡り
先だって「骨」展を見てきたとき、併せていくつかの展覧会も見てきましたが、今エントリーは、7月27日まで国立新美術館で開催されている標記展覧会について。
三葉虫や瑪瑙化した樹木の化石、地上に落下した隕石といった自然物そのもの。
あるいは、色のついた細いプラスティック管で組み立てた tRNA の原子構造。
そういったものを会場に鎮座させて、これが芸術でござい、と言われても、そりゃあちょっとどうなんでしょうねぇ、と思うのよ。
日本語を使って話す行為それ自体をオレの特許だかんな、と言っても誰も取り合わんでしょ、と思うのよ。

そんな中、唸らされた作品がひとつありました。
「アナレンマ」シリーズというのがそれです。
←の写真は当展覧会のキービジュアルとして、サイトや企画展スケジュール等、いろいろな場所で提示されており、私が美術館に足を運んだのも、この写真に惹かれたからなのです。
ぶっちゃけこの作品さえ得心できればこの展覧会は満足すべし、と思っていたんですが、説明を読んで得心いたしましたので満足しております。
これは合成写真ではありません。 では、どうしたらこういう写真になるのか。
「一年間、同じ時刻、同じ場所で太陽を多重露光撮」して初めて、太陽がこのような軌跡を描くのが視覚化できるんだそうです。
調べてみたら、アナレンマというものは、この作家の独創ではないそうで、"アナレンマ"でググるといろいろ面白いものがでてきます。
今ではデジカメによる合成で、銀塩フィルム時代よりは難易度が低くなっているそうですが、でも1年間毎日同じ時刻同じ場所といのは実に大変な苦労ですね。
- 地球の公転が楕円軌道を描いていること
- 地球の地軸が公転面に対して23.4度傾いていること
この二つが影響しあって、太陽があたかも8の字を描いているように見えるとのことですが、私は上の写真を見た瞬間、これは8ではなく、無限大∞であるという印象を受けました。 そしてそれは間違いではなかったようです。
宇宙原理を支配する数式による刻印に、森羅万象に秘められた無限の拡がりを感じませんか。
星々が奏でるシンフォニーがこのように美しい造形を描くことも感動的なことです。
そして、1年365日8,760時間525,600分31,536,000秒を一瞬に焼きつけ、見えないものを見せてくれる人の造りしテクノロジー、これまた実に素晴らしいではありませんか。