『考えるキノコ展 -摩訶不思議ワールド-』
2009/07/28 22:20 - アート巡り
標記展覧会を見るために初めてINAX ギャラリーへ行きました。
規模こそ小さいけれど、ここは実に広い領域をカバーするギャラリーなんですね。 企業の文化活動系ギャラリーは侮れん。私ファンになりました。
企業が持つ文化活動系ギャラリーといえば、ggg やリクルートの二つのギャラリーなどがすぐに思い浮かびますが、その企業の業務内容に関わる方面を扱うものが多いじゃないですか企業ギャラリーって。
で INAX といえば、その基は伊奈製陶。 タイルから始まり、今はバス・トイレタリー・キッチン等、水周りの住宅設備に関わる会社です。
そんな INAX が持つこの INAX ギャラリーは企業業務を超えて「建築、デザイン、アート」の展覧会をおこなうギャラリーとのこと。
資料スペースに並んでいた過去の展覧会の図録の中に「土佐物部村」の文字を見たときは驚きましたよ。 多少なりとも妖怪や民俗学に興味を持つ者なら誰もが知っている、「高知県物部村のいざなぎ流陰陽道」についての展覧会が、東京の、しかも INAX という一私企業が持つギャラリーでおこなわれていたとは! 式王子の実物とか展示されてたのかなぁ、見たかったなぁ。
まぁそれはともかく今回はキノコの話。
キノコって萌えるよね。漢字で書くと茸、蕈、菌。もう画数が多くてそれだけでウキウキしちゃう。
アミガサタケやキヌガサタケといった奇妙な形態や、ツキヨダケの幻想的な光、ベニテングタケやタマゴタケといった毒キノコの色彩、マイタケやホンジメジ、キクラゲの味、冬虫夏草の生態などなどなど。 脳も舌も魅惑するとても興味深い生物群、それがキノコ。
展示会場でまず最初に目にはいるのは、まるで今、森の中から毟ってきたばかりといった風情のいろいろなキノコたち。
何でも急速に冷凍して、それから水分を一気に飛ばすと、生きているままの状態をほとんど損なわずに標本化できるという。 冷凍のうえ乾燥するので、めちゃくちゃ脆くなるという欠点があるそうですが、生きているキノコの見栄えをほとんどそのまま保存できるとは素晴らしいですね。
その冷凍乾燥標本はそれほど種類はなかったんですが、透明樹脂に封じ込めた標本は、かなりたくさんの種類のキノコがありました。 冬虫夏草は何度見ても神秘的ですねー。
今回の展示で一番印象に残ったのは、モグラとキノコの共生の話。
メモってこなかったんで、キノコの名前は忘れましたが、ある特定のキノコはモグラと共生関係を結んでいるという。といっても別にモグラに生えるわけではないですよ。
モグラは一度掘った巣穴は長いこと使う習性があります。で、排泄行為は一定の場所でおこないます。 つまりトイレがあるということですが、長く使っている間には排泄物が溜まり、アンモニアが発生します。
このアンモニアはモグラにとってはよくない物質だそうで、それの除去がけっこう大切なんだとか。 で、ここででてくるのがキノコ。そのキノコはモグラのトイレに溜められた排泄物を栄養として育つという。
まぁキノコは分解者だから、そういったものを栄養源にするのは納得なんですが、不思議なのは、モグラのトイレで育つのはそのキノコに限られるんだそうな。 他の種類のキノコは一切生えないらしい。 このキノコは餌場を独占しているということですが、そういった事例は自然界では珍しいらしい。 自然の神秘を感じますね。
話は展覧会から再び INAX ギャラリーに戻りますが、私がファンになったのにはもう一つ理由があります。

INAX ギャラリーが入っている建物には INAX ブックギャラリーという書店もあります。ここがまた萌え。
昔、神保町に洋書がメインのデザイン本専門の、CHARLESE TUTTLE という本屋があったんです。
私は神保町に行くたびに必ず寄って、しばしば本を買い求めていたものですが、惜しくも数年前に閉じてしまい、以来、実に大きな喪失感を抱き続けてきました。 で、この INAX ブックギャラリーなんですが、その CHARLESE TUTTLE を彷彿とさせる品揃えなんです。

死んだと思っていた大事な人に再会したような、とても嬉しい不意打ちです。 これからは新橋、銀座の展覧会に行くたびに、ここまで足を伸ばそう、そう決心したのでした。
参考アフィリエイト
水野久美の「おいしいわぁ」に
ハァハァしちゃう、
とっても怖い映画。
原作つーか原案つーか、
短編「夜の声」所収
翻案したマンガ「化烏」所収。