人間文化研究機構連携展示『百鬼夜行の世界』(3) -百鬼の素性と展開-
2009/08/04 21:11 - アート巡り

片道2時間半近くかかった苦労話や、国文学研究資料館自体についての感想やレポなど、縷々書きつづりたいことはあります。
が、それらは別の機会に譲るとして、当エントリーでは目的の展覧会『百鬼夜行の世界』を見て抱いた感想に絞って述べたいと思います。
研究機関の一角にある展示室ということで、会場自体はさして広いものではありません。 小学校や中学校の教室を2つ長くつなげたといった感じでしょうか。
しかし小さいとはいえ、造りは美術館レベルの実に立派な展示室です。
こちらでは前々回述べたように、その展示物は4章立てで構成されています。
第1章「百鬼夜行絵巻」では絵巻が5点展示されています。
第2章「百鬼に出会う、避ける」では、今昔物語や宇治拾遺物語、大鏡、栄花物語といった随筆、小説などの文芸作品や、土蜘蛛草紙絵巻や田原藤太の事績について描かれた江戸期の絵巻などから、怪異に遭遇した記述や、怪異を退ける場面を記した文献が展示されています。
珍しいところでは縮緬本と呼ばれるスペイン語による日本昔噺の絵本がありました。
第3章「百鬼の行列」では、百鬼夜行絵巻以外の妖怪たちの行列を扱った絵巻として、付喪神絵詞や化物婚姻絵巻、河鍋暁斎の百鬼図などが展示されています。
第4章「描き継がれた百鬼」では江戸期以降、百鬼夜行絵巻がどのような変貌を遂げたのかということについての展示です。
江戸期になると妖怪たちは行列から切り離され、妖怪図鑑や絵本、小説の挿絵などに組み込まれていったそうです。つまり拡散していったということでしょうか。 黄表紙や鳥山石燕の百器徒然袋などが展示されています。
百鬼夜行絵巻というのは写本の継続で、同じモチーフを何人もの画家が描き続けてきました。 それゆえに、こういう風に一同に並べてみると、描いた画家の技量が如実に表れていて、実に興味深いですね。
はっきり言って江戸期の絵巻は総じて酷いです。
ヘロヘロした線は子供の落書きかよ、と思わせるくらいヘタクソです。 墨と筆で書いておいて、強弱が一切感じられない均一な太さの線というのも、逆の意味で感嘆してしまいますよ。 塗りも粗雑で、無名の絵巻は、やはり無名なだけはありますね。 黄表紙の挿絵に至っては語るに及ばんといった感じ
そんな中、この会場に展示されている物の中で一番目を惹いたのはやはり鳥山石燕と河鍋暁斎。 一味も二味も違いますね。格の違いを見せつけています。
特に河鍋暁斎の描く化け物は、体毛の細かさが特に印象に残りました。