『MOTアニュアル2010:装飾』
2010/02/15 21:33 - アート巡り
『サイバーアーツジャパン─アルスエレクトロニカの30年』と一緒に、東京都現代美術館で見てきた展覧会二つのうちの一つめ。
その展示物のあまりの細かさに圧倒されるための展覧会、それがこの『MOTアニュアル2010:装飾』です。 作る手間と根気に思いを馳せると、もう目眩がしてきそう。それだけの迫力が籠もっている作品群が展示されています。
マイナス評価で印象に残ったのが1点、プラス評価で印象に残ったのが1点、プラマイは特になく印象に残ったのが1点、でな感じでしょうかオレ的に。
プラマイ関係ないものとしては青木克世作品。
これは本展覧会のキービジュアルに使用されている作品ですが、このキービジュアルは作品の一部をドアップしたもの。
その有機的なあまりにフラクタルっぽい造形からして、てっきり自然界の力(結晶化とか)を借りたものだとばかり想像していたら、これってば陶製でした。ってことは人が手でひねって作ってるってことですよね。 人の手でこの造形ってのはかなり驚き。
マイナス評価は山本基『迷宮』。かなり広い床面に塩でもって細かい模様を描きあげた作品。
そのラインのデザインはめちゃくちゃカッコイくて個人的には超ツボで、作品自体も労作だとは思いますけど……
ちょっとした外気の変動ですらその姿を変えてしまうような素材を選ぶんなら、むしろ(積極的にとは言わないけど)多少の作品の破損を織り込んだインスタレーションの方が私は望ましいと感じました。 永遠なんてあるわけないのに…… という感傷を鑑賞者に惹起するような(月並みですかねー)。
それともそういった儚い材質を使っておきながらも作品の破損を極力排除しようとするのは、脆い肉を持っていながら、永遠を渇仰する人間の魂の業、を表現しようとでもしているんでしょうか。
何かいまいち違うなぁ、という印象が残りました。繰り返しますが、そのデザインはすごく魅力的ですよ。
プラス評価は塩保朋子『Cutting Insights』
要は切り紙なんですが、その規模が半端じゃない。 そのサイズは6.5メートル×3.56メートル。そんだけ大きな紙全面にビッシリと実に細かい切れ目が刻まれている。
その紙自体、見ていて鳥肌立ちますよ偏執とか狂気とも呼んでいいくらい凄まじい気迫があります。
暗い部屋の天井からその紙を吊してライトを投影。壁に映るその影がまた繊細で美しい。 実に心に響く作品でした。