『VOCA展 2010』
2010/03/21 22:02 - アート巡り

昨日(2010年3月20日)は上野にミュージアム巡礼で4カ所の展覧会に行ってきましたそのレポなんぞ。
まずは、上野の森美術館で2010年3月14日(日)~30日(火)まで開催されている標記展覧会から。
この展覧会はキュレーターによって推薦された若手アーティストによる新作の展示会で、今回は35名の作家が参加していますが、その中から個人的に心に残った作品についての印象を列挙します(以下、展示順)。
「そこにあるイメージ I」「そこにあるイメージ II」 中谷ミチコ
この作品は VOCA展 2010 受賞作品のページで写真を見ることができますが、現物を見ないとその真価は理解できません。そういタイプの作品です。
写真にあるように人物像ですが、これは実は平面に描かれた絵ではありません。
材質は石膏、ポリエステル合成樹脂、樹脂用顔料で、ある意味、彫像のような立体造形です。 んー、彫像というのは正確ではないですね。これは凸状の立体ではなく、凹状の立体になっています。 写真に人物の余白として写っている白い部分は壁面で、その壁に向かってえぐれている状態。
粘土の固まりに人間を押しつけて型をとったような形態、要するに人物が裏返っているとでも言いましょうか。
そのような造形によりどのような効果が生じるのか、というのがこの作品のキモ。
鑑賞者がこの作品にどの角度から向かうかによって、見え方が異なってきます。 作品の人物の顔が鑑賞者を追いかけてくるんです。 強引なホログラムとでも言いますか。
これは虚をつかれたという感じで、素直に感動しました。
- Michikos(作者のウェブサイト)
「雪」 渡部裕二
これは表装されていない掛け軸風な作りです。縦に長いむき出しの半紙。
驚愕したのは作品自体ではなく、その展示のされ方。
その半紙が壁にホチキス針で直止めされている、というとてつもない方法。 そればかりが心に残り、どんな絵が描いてあったかさっぱり思い出せない。
「永劫の雨」 ましもゆき
巨大な画面に黒インクでとても精緻に孔雀? 鳳凰? が描かれている作品。 その緻密さに圧倒されました。
「untitled(rooty)」 市川孝典
本展覧会で最も心奪われた作品。
和紙を線香で焼き、穴を開けるという技法によって描かれた作品。
穴の開いた和紙は黒い面に載せられており、紙の焼け焦げと、穴を通して見える黒によって、抽象的で具象的な紋様を描き出しています。
この作品を仕上げるために注ぎ込まれたであろう集中力の凄まじさが作品自体からヒシヒシと伝わってきました。
- Ichikawa Kosuke(作者のウェブサイト)
- トライバルビレッジ浅草によるアーティストページ
「Funicula(仮題)のための習作 b」 坂本夏子
格子状に組まれた厚手のガラス越しに世界を覗いた的な歪みで景色を描いた作品。 その歪みの描き方がかなり偏執的な油彩画で、ちょっと怖い印象を受けました。
この作品もVOCA展 2010 受賞作品のページに掲載されています。
「SAKURA」 大庭大介
これは実に美しい作品です。
画面全体は白ベースですが、白ではなく、光沢を放つ中間色の青や緑や赤のアクリルを点描法のように画面に置いています。 その光沢がまるで虹のようで実に美しい。
淡さ、儚さ、静けさの中に深みを感じさせる作品でした。
- DAISUKE OHBA(作者のウェブサイト)
- SCAI THE BATHHOUSE によるアーティストページ