ハート・ロッカー
2010/04/16 21:27 - は・ば・ぱ・う゛行
万引きに手を染める輩というのは、別にその物が欲しくて万引きをするわけではなく、バレるかバレないかというスリルに病みつきになっているとか。
要は脳内麻薬物質ドーパミンがヘンな出方しちゃっって中毒症状に陥っているわけですが、この映画の主人公もそんな歪んだドーパミン分泌に冒された人物です。
スリルを味わう手段は、爆発物の解体。生きるか死ぬかというスリルにどっぷり浸っています。 ってゆーか自殺願望なのかな。
でもそんな設定、この映画を観るに当たってはどうでもいいこと。 ってゆーかそんな設定いらなくね? 普通の兵卒でいいじゃん、と観ている間中ずっと感じていました。
この映画の特異性はその構成です。
フェイク・ドキュメンタリーになっており、リアリティを出すために、以下の二つの手法を採用しています。
- 手ブレのように安定しない画面
- 脈絡のない散漫なシナリオ
あたかもハンディカメラで撮影しているかのように、始終グラグラ揺れまくり、すばやいパンやティルトではブレがさらに大きくなる、というような撮影法が実に徹底されています。これにより緊迫感が生まれています。
各エピソードに脈絡を持たせず、関係ない事象が単発的に起きています。このようにあえてストーリーを紡がないことにより現実感が生まれています(ところで、何でこの映画アカデミー脚本賞受賞したの? ストーリーが存在しないのに)。
まぁ意図は分かるし、なかなかに興味深いし、よくできた映画だなぁとは思います。 でもなんか醒めるんだよなぁ。
私、兵士になった経験も、戦場となっている場所に行った体験もないから、こんなこというのもアレですが、やっぱフェイクはフェイクって感じがしちゃうんです。なんかウソっぽいなぁと。
特に、人間爆弾にされるために殺された子供の死体の見た後の主人公の夜の行動とか、夜中の自爆テロの後の3人だけの行動とか。
あんな統率を乱すことしたら即除隊か軍法会議じゃないのかなぁ。
いかに本物風に演出しても、やっぱまがい物はまがい物にすぎないと思うんですよ。
フグの白子が食いたい人間にタラの白子を出してもしょうがない、それなら子牛の脳を出せ、って話があったでしょう? それと同じじゃないでしょうか。
てゆーか爆弾処理班を主人公に据えるなら、無事バラせるか、それとも失敗して爆死するのかというハラハラドキドキ、成功したときの安堵感、失敗したときの絶望感。 観客としてはそういったことを堪能したいんでありますよ。
爆弾の解体作業工程を、もっともっと、これでもかこれでもかと、飽き飽きするくらい大量かつ丁寧に描写して欲しかった、というのがこの映画に対する感想です。