となりのトトロ
2006/07/29 00:17 - た・だ行
「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」で、神話的世界観や原型的物語、胸躍るスペクタクル等で我々を大いに楽しませてくれた宮崎駿監督が次に世に問うたこの映画は、全2作とは打って変わって、極端にストーリーを排除し叙情的雰囲気のみで構築されています。
のどかな田園風景、美しい自然、共同体構成員の紐帯といった、かつての日本には当然のごとくあったもの、そして今は失われてしまったもの、そんな幸せな景色の中で繰り広げられる、さつきとメイの一夏のささやかな大冒険。
表向きはそんな映画ですが、しかし、そういった美しく心なごむものの向こう側に、監督の箍の外れまくったリビドーがドロドロと溢れ出しているのが透けて見えます。
まるで、広範囲にわたって負ってしまった擦り傷からジクジクと滲み出る薄汚れた半透明の黄色い体液を見せつけられているような気色の悪さを感じる映画。 それがこの「となりのトトロ」です。
メイは4歳児だから、まぁ妥当とは言え、いくら昔の小学生ということを差し引いたとしても、さつきの行動はあまりにも狂躁的。
引っ越した家をはじめて見たときの側転やインディアンの物真似など、 演技的なまでに大げさな行動は、観ているこっちが恥ずかしさのあまりに消え入りたくなりますよ。
よくもまぁこんな演出を堂々とできるもんだと、ある意味感心します。
少女とは、幼女とは、斯く在るべし、という監督の主張は自由ですが、あまりにもアレな脳内妄想の垂れ流しは気持ち悪いです。
そして、「メイを捜して!」とさつきに泣き付かれ、抱きつかれて頬を赧らめる巨体のトトロが、これまたかなり薄気味悪い。
「ルパン三世 カリオストロの城」で見せた変態性にさらに磨きがかかって、饐えた臭いが漂ってきますね。
まぁなんていうか、都会からある日突然やって来た闖入者に、平和な日常を掻き乱される純朴な鄙人にとっては、傍迷惑この上なしといったところでしょう。
でも背景絵の美しさは絶品ですねぇ。これだけは賞賛に値する。実にすばらしい。